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作品名:恋愛男子 作者:シン

最終回   恋愛男子
「私…好きな人がいるの…」

「え?」

とある先輩の恋愛相談だった。


俺は高校2年生
高校に入って早くも一年がたっていた

特に入りたい理由もなかったが、この高校を選んだその一番の理由は

『大好きな先輩が進んだから』

これだ。

俺はそれほどかっこよくもない。
容姿普通、性格普通、頭も普通。

『The普通』と呼ぶにふさわしいかもしれない

この高校に入ってまずしたことは

先輩の入ってる部活を探したこと。

すぐに見つかったのでそんなに困りはしなかったが

男子テニス部のマネージャーをしているようだ

俺はテニスなんてしたこともないけど、テニス部に入った

少しでも多くの時間この先輩と居たいからだ。

でも、今その先輩の恋愛相談を受けている…

「聴いてる?好きな人がいるの…」

「あぁ、聞いてますよ。誰なんですか?」

俺は単刀直入に聞いた。
その人は同じテニス部の俺の先輩だった

とっても仲のいい先輩で、俺の好きな先輩は
その先輩と近くに居たいからテニス部に入ったのだと言った。

合致しすぎじゃねぇか…
ほとんど一緒…

それに、俺の好きな先輩は付き合いたいとまで言ってきた…

俺はゴキブリが飛んできて、頭に乗ったことが一番人生で辛かったが
それ以上にめちゃくちゃ辛いと思った。

アドバイスじゃないが、俺はその先輩に

「普通に告白すればいいんじゃないですか?」

など適当なことを言った。

その先輩は「そうか!」とか言っていたが、俺は「振られてしまえ…」

などと思っていたので、先輩の笑顔をみると
その考えをしていた俺の胸が痛む…

シュチュエーションなんかも伝えたが
すべて俺がこの先輩に使うはずだったものだ…

それがこんな形でお披露目になるとは…

「すごい!君天才!!」

など言われて嬉しかったが、俺は嫌な気分にしかならなかった…

告白の期日は明日。

まぁ俺の完璧なシュチュエーションによって大成功してしまった

俺はその先輩にめちゃくちゃ褒められたり、感謝の言葉をたくさん言われたが

その日の夜…俺は枕を濡らした

* * *

俺の片思いの期間は長かった

三年間…
それが昨日終わった…

その先輩には彼氏がいる…

この事実はもう揺らぐことのない…

どうしようもないんだ…

あれから1日、2日と経つが

仲の良かった先輩とは俺は口を聞かなくなった…

それもそうだ
敵なのだから…
俺の好きな人を奪った…

そんな人に話しかけるほど俺は強くはなかった。

* * *

もう一週間がたった。

俺は部活をやめようと退部届けを出そうとしていた…

もういる意味がなくなってしまったんだ
これ以上辛い思いはしたくない…

そう思って職員室に向かってる時、誰かとぶつかった

「いてっ……え?先輩?」

「あ…ごめん…」

俺はとっさのことに返事をすることができなかった

「なんでもないから…」

先輩はそう言うと、俺の後ろへと駆けていった

なんなんだ…それに今

泣いてなかったか?

先輩が角を曲がり見えなくなるまでずっと目で追っていた

まっすぐの伸びた廊下が曲がって見えた

俺は前を向き、一歩進んだところで足に何かが当たった

「ん?なんだこれ…?」

そこには使い慣れた携帯があった

「あぁ先輩のか…」

俺はそう思い、その携帯を拾った

「明日返さないとなぁ…」

と思いポケットに携帯を入れた瞬間、電話が鳴った

俺はびっくりしてしまったが、ただのLINEの受信音だということに気づき
少し落ち着いた

その携帯を操作すると、先輩はロックをかけていなかったので
内容を見ることができた

その中にはとんでもないことがあった

* * *

その携帯を家に持ち帰った

先輩と好きだった先輩のやりとりは酷いものだった…

『画像送んないと、ボール思いっきり当てちゃおっかなー?』

『それともこの恥ずかしい写真を公開しよっかな〜?』

この様なやり取りばかり…

俺はムカつく感情からなのだろう、歯ぎしりが止まらなかった
こんな酷いやつだったのか…

そんな素振りは1つもなかったのに…
いや、演技だったと思うべきだ…

許さない…俺はこの先輩を許さない…

俺はもう一度歯ぎしりをしていた

* * *

次の日…
俺は酷い先輩の情報を集めるためにいろいろ聴きまくった

部活の友達…
中学校時代の後輩…
酷い先輩の元カノと思われる人

最後の元カノと思われる人からは、とってもいい情報をもらえた

俺はそれからも情報を集めまくった

1日、2日とたつたびにいろいろと明確になってきた

現在彼女が4人いること…
その人の弱みを握っては脅して、卑猥な写真を送らせる…

こんなことばかりをしているようだ…

それで、一人その写真をネットに公開させて自殺させた人もいるらしい

「なんてひどいやつだ…許しておけないな…」

俺はそんなことを思いながら情報収集を続けていた…
が、そんなに上手くいくことなんてないのだ

「誰を許さないだって?」

「え?」

俺は意識を失った…

* * *

何時間たっただろうか…

ここはどこだ?

「意識は戻ったか〜い?後輩君」

この声は…

「お前…!」

「おいおい…こわいねぇ〜先輩にお前かよ!!」

俺は蹴られた…
手を縛られ足を縛られ、どうすることもできなかった

重点的にお腹を蹴られた…

多分アザ等が残りにくいからであろう

でも、この痛みは俺の好きな先輩の痛みにとっては造作もない痛みなのだろう…

そう思いながら、俺は我慢し続けた…

* * *

数日後俺は部活をやめた。

俺の好きだった先輩は俺の2日前にやめたのだが

その原因を俺ということにされて、俺は他の先輩からもいじめられた

酷い先輩は世間ではいい人呼ばわりされていた

そんな人を裏切る人も疑う人もいない…

「クソッ…どうすりゃいいんだ…」

俺は好きな先輩にも嫌われて…
学校にも行けない…

このことを警察にいっても信じてもらえないだろう…

何よりも証拠がない…

もうどうしていいかもわかんない…

俺は振り上げた腕を自分の膝に振り下ろした

痛い…

痛みというのはこの様なものだったのか?

腹を蹴られすぎてその痛みに慣れてしまったのだろう…

「いてぇな…殴られるのて…ハハ…」

この時俺は天から授かったかのように1つの打開策をひらめいた

「あぁ…上手く行くか分かんねぇけど…やってみるべきかな…」

そう言うと俺は立ち上がり、まだ返してなかった先輩の携帯をもちだし

「この方法でどうにかしてやる…」

俺はそう言うと一目散に部屋を出て行った

* * *

「おい…お前ちょっと来いよ」

俺は酷い先輩の前にいた

「よくそんなこと言えるなぁ?お前馬鹿なのか?」

そのような事を言ってるように聞こえたが俺にはその声は届いていなかった

「うるせぇよ…お前はもう終わりなんだからな」

俺はそう言うと相手が返事をする前に俺は続けた

「ここは学校の屋上。逃げ場なんて1つもないぜ?」

「何がいいたい…?」

相手は動揺しているようだ

「お前の悪行をすべて警察に話した。俺への暴行その他諸々だ」

相手は笑っている。なんでそんなに笑ってられるのかが俺には不思議だった。

「ププ…ごめん(笑)何言ってるかわかんねぇわ…(笑)証拠はどこなんだよ(笑)」

俺は苦笑した…まだ気づいてないのか…

「証拠?そんなもの作ればいい」

「は?何言ってんの?」

「まずお前を悪人だということにしてしまえばいいだけのことだ」

「何が言いたいんだよ!!」

相手の慌てた表情…傑作だ
俺は汚れた制服からある携帯を取り出した

「まず第一の証拠は…これだよ…」

「な!お前それ!!」

そう。俺が見せたのは俺の好きな先輩の携帯

その中には先輩の悪行がすべて詰め込まれたいた…

すべてを察したのか、俺の前にいるこの男は
ナイフをどこからか取り出し

「返せよ…お前…殺す…」

「殺すか…じゃあどっちにしろ牢屋行きだな…」

俺はそう言うと相手は飛びかかって来た

一瞬の出来事に目が眩む

手にはナイフ…俺は避けることもできずに

「うっ……」

鈍い音がした…
俺の肉を切り裂いた音
腹部に刺さったそのナイフは一瞬にして俺の血で真っ赤に染まった。

ジャストタイミングとでも言っておこう

その時、屋上には二人の大人が入ってきた

警官だ

「おい!何をしている!!お前こっちこい!!」

「なんだよお前!はなせ!」

先輩は1人の警官に抑えられた
背中に手を回され、手錠をかけられた

「おい…大丈夫か君?お…ぃ…」
俺は床に倒れて、だんだんと声が遠くなっていった

俺は意識を失った

* * *

「ここは…どこだ…?」

俺は目を開けると、そこには俺の親と大好きな先輩がいた。

「あ!起きた!大丈夫?!」

先輩がそういうと、ナースが病室を出て行った

多分俺が目を覚ましたのを医師に言いに行ったんだろう

「あぁ先輩…大丈夫ですよ…うっ…」

俺は先輩に抱きしめられた

「もぅ…何してんのさ…ばか…」

警官が全部話したのだろう…なんでそんなことするかな…

俺はあの日、すぐに向かったのは夜の町
そう、ヤンキーに喧嘩を売りに行った

もちろん俺はボロ負け…
半分死んでいたのかもしれない

でも、そのおかげで俺が証拠になることができた

そう。俺は証拠をでっち上げたのだ

そこらへんのヤンキーに殴られたのは痣を作るため…
痣は暴行のいい証拠になった

俺はそれを酷い先輩のせいにして、その先輩の悪行を警官に話した

極み付けはこの携帯。

警官は俺の言ったことを信じるしかなかったのだ

そして、時間を指定して屋上に行き
俺が刺された瞬間に警官登場

完璧なシナリオだったのだ。

「ちょっ…痛いですよ…」

「うるさい…ばかの反論は聞かないんだから…」

先輩は涙を流していた

俺は数分間先輩に抱きしめられていた

強く…固く…

少し痛かったが、何よりも嬉しかった

気づけばこの部屋には俺と先輩しかいなかった

親は気を利かせ出て行ったのだろう…
恥ずかしな、このやろう…

「あのね…」

そんなことを思っていると、先輩が話始めた

「あ…ハイ。なんでしょう?」

この言葉を聞くと先輩は顔を上げ話した

「私、君がこんなに私のことを心配してくれてたなんて知らなかった。辛い思いをして…私を助けてくれたんだね…君は私のヒーローだよ…ありがとう…」

先輩は涙を流していた

その涙の意味はまだわからないが、悲しかった意外だったと思いたい。

「こ…今度…マックでもおごってあげるね?」

先輩は涙を拭くと、後に続けた

「何が好き?」

俺は少し時間がかかってしまったが、返事を返した

「先輩が好きです」

俺はまた先輩に抱きしめられた

END


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