「大きくなったらね。りこ、ゆうくんのお嫁さんになるの」
「あ。ゆう兄のお嫁さんになるのは、みすずだよぉ」
「りこだよっ!」
「みすずなのっ!」
「ふ、ふたりとも、けんかはダメだよ」
「ゆうくんは、だまってて!」 「ゆう兄は、だまってて!」
「う、うん」
「二人とも優真くんを、困らせないのっ! そんなんじゃ、どっちもお嫁にもらってくれないわよ?」
「…え…」
「それはイヤッ」
「け、けんかはやめるっ!」
「じゃあ、三人とも…笑って、こっち向いて…撮るわよ。はい、チーズ!」
これが、私たちの思い出。
私たちには、よくある風景だった。
あれから、数年の時が経って…
どうして、こんなことになっているの!?
「ゆ、ゆうくん…?」
私の問い掛けに、ぴくりとも動かない。
傍にいた『あの子』が、自分の喉元に、ゆうくんの赤で濡れたナイフを、突き付けて笑っていた。
「ふふ。理子姉が大事にしてたもの…全部…奪ってあげる。」
ナイフの切っ先が、『あの子』…美鈴の首を傷付け始める。
「や、止めてーっ!」
私たちは
どうして
こんなことに
なってしまったのだろう?
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