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作品名:魔王の器候補は両性体 作者:雲のみなと

第9回   9
登校してきたアルクは2年生の教室へと入った。
「おはよう。」
自分から皆に挨拶をするけれどクラスメイトはアルクを一瞥しただけで誰も挨拶をしてこない。だがアルクにとっては慣れっこのこと。それに今の自分にはティアがいる。全く気持ちは落ち込まなかった。アルクは当たり前のように席についた。
すると15歳のヒンリーがアルクの机の傍に立った。アルクを見下すその視線は侮蔑の色を隠そうともしない
「なぁアルク。」
「なに?」
「最近友達が出来たみたいだな。」
「!」
ティアのことだと思った。机の下でこぶしをぎゅっと握った。自分と一緒にいることでティアのことまで悪く言われるのは耐えられない。
「あの銀髪の子、綺麗な子だよなぁ。あと5年もしたら相当な別嬪さんになるぜ。俺の彼女にしてやってもいいんだけど。」
「!!」
アルクは思わず立ち上がった。その顔は怒りで満ちている。ヒンリーの軽率な言葉に苛立った。
だが暴力には出ない。騎士見習いとしてそれは許されないからだ。ヒンリーはアルクが攻撃してこないことをいいことに
「おぉ怒っちゃったね。魔力がないから全然怖くないけれど。」
クラスメイトがその言葉を聞いてクスクスと笑った。
「まぁそう怒るなって、騎士の卵さんよ。お姫様を守るナイト気取りかよ。」
アルクはもう我慢出来ないと思った。いくら相手が攻撃系の魔力を操れるとはいえ自分だって今まで騎士学校で培ってきた闘いのノウハウがある。家に帰ればローレイが武術を教えてくれている。ヒンリーに一矢報いることぐらいは出来る。
そう考えたアルクがヒンリーに掴みかかろうと前に出ようとした瞬間だ。
「しかし両性体じゃあ彼女に出来ないわな。女じゃないし。」
「両性体・・・?」
アルクはヒンリーの言葉で動きを止め聞き返した。
「あれ、お前知らなかったのか。ティアは両性体なんだよ。男でも女でもある。お前と同じものがついているってこと。」
「まぁでもヒンリー、アルクにそんなこと言っても仕方がないよ。どうせ男友達として接しているんだろうしさ。まだ10歳のガキんちょだぜ?男女のどうのこうのなんてないさ。からかうのはやめとけって。」
三か月前にクラスメイトになったジョルジュがヒンリーをたしなめた。ジョルジュの言う通りだった。
ティアが両性体と言われても自分と同じものがついていると言われてもそれがなんだというのだ。男でもあり女でもあると今さら知ったところで今までと何も変わらない。これまで通り一緒に遊んで共に時間を過ごせばいい。だって楽しいし幸せなんだから。
それなのになぜだろう、胸の奥がチクチク痛む。ティアが純然たる女の子ではないと知っても何も変わらないはずなのに。これまで通りボール蹴り遊びをすればいいだけなのに。
正体不明の心の痛みにアルク自身が呆然としている。その横でヒンリーは嫌らしい笑みを浮かべながら
「あらら、初恋が終わっちゃったかな。でも安心しろ。5年経ったら俺がティアを女にしてやるからさ。」
「うわあ言ったね、ヒンリー。本当あんたは女たらしで最低!両性体にまで手を出すとか本当見境なしなんだから。その内マジで女に後ろから刺されるよ!」
クラスメイトの女子たちがヒンリーを責め始めた。このヒンリーは構内でも女に声をかけまくって有名なのだ。
「うるせー!あと5年経ったらって言ってるじゃん。今手を出したら犯罪だよ犯罪。10歳のガキに興味ないわ。」
「女のことばかり考えていないで少しは魔術磨きなさいよ。あんた全然上達してないじゃないの。先生とワンツーマンで補習授業受けているのにちっとも攻撃がなってないわよ。つい最近まで一年生だったジュルジュにもう追い越されているし。」
女子の中でリーダー的存在のローズがズケズケと遠慮なく物を言う。よっぽど女たらしのヒンリーのことが嫌いらしい。
「うるせーな、分かっているよ。こういうのは才能がものを言うんだよ。俺は魔術師になる才能がないんだよ。たまたまちょっと魔力があるからって強制的に親にここに入学させられただけ。本当は嫌なんだよ。この学校は160人しかいないから女の数も少ないしその女もたいしたことし。プライドばかり高いブスばっかり。」
「なんですって!!」
「今のは聞き捨てならないわ!撤回しなさいよ!」
ヒンリーと女子たちのバトルが始まった。男子たちは君子危うきに近寄らずとばかりにそれぞれの席に散っていく。アルクはすっかり萱の外だ。
しかしアルクはそれどころではなかった。頭の中にティアが両性体という言葉がこびりついて離れない。


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