「あなたも一人ぼっちなの?」 ティアは思わず聞いてしまった。男の子は寂しそうに「うん。」と頷く。男の子の悲し気に揺れる瞳はまるで自分そのものだとティアは思った。するとティアの唇から自然と言葉がこぼれる。 「一緒に遊ぼうか?」 すると男の子の表情がとたんにぱぁっと明るく輝きだした。それを見てティアは心から嬉しくなった。 「僕の名前はアルク・サンドラ。君は?」 「私はティア・アムスよ。よろしくね。」 「うん!!」 そして二人はボール蹴りを始めた。お互いの間をボールが行ったり来たりするたびに孤独な心が解けていくようだった。心がぽかぽか温まっていく。ティアとアルクの表情はとても明るく笑顔が輝いている。 「あははは。ボールそっちに行ったよ!」 「わーわー。ちょっと待って!」 ボールを追いかける笑い声が校庭に響く。全力でボールを追いかけるのにも疲れた二人はちょっと休憩することにした。芝生の上に二人並んで腰をおろした。 「ティアは僕と年が同じくらいかな?」 「私は今年10歳になったの。アルクは?」 「僕も10歳。」 「アルクもこの学校の生徒だよね?」 「・・・うん、一応。」 アルクはなぜか気まずそうに答えた。ティアは敏感にそれを察した。 「アルク、どうしたの?」 「ううん。なんでもない。ティアはもちろん生徒だよね?」 「うん。半年前に入学してきたの。アルクはいつ入学したの?」 「一年半前。だから僕の方が学年は一つ上だね。」 「そうだね。」 その時、昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴った。 「あ・・・。」 「あ・・・。」 二人の口からため息が漏れた。なんとも寂しい。このままずっと一緒に遊んでいたい気分だ。 「ねぇ。ティア。授業が終わったらまた遊ばない?」 「いいよ。また遊ぼう。」 アルクの誘いにティアは喜んで乗る。また会える約束をすればそれぞれの教室に帰るのも寂しくない。 「じゃあ、放課後ここで待っているよ、ティア。」 「うん、私も待っている。」 二人は顔を見合わせ笑顔を交わした。手を振っていったん別れるが心は踊るようだった。 やっと友達が出来たのだ。こんな嬉しいことはない。二人は授業を受けている時も放課後のことを考えるとそわそわしてしまう。自然と笑みがこぼれそうになって慌てて真顔になった。 時計の針が15時を回り、本日の授業の終了を告げるチャイムが鳴った。待ちに待った放課後がやってきたのだ。ティアは急いで帰り支度をし教室から転がるように出て行った。そんなティアの姿を見たクラスメイトが呟いた。 「急いでどこへいくのかしら。珍しいこともあるものね。」
中庭に辿り着くとすでにアルクがいた。アルクはティアの姿を見つけると嬉しそうに飛び跳ねながら 「こっち!こっち!」と手招きをする。息を切らしてアルクの元へ駆け寄るティア。 「何して遊ぶ?」 さっそく遊びの相談だ。 「鬼ごっこ!」 「じゃあジャンケンで鬼を決めよう。最初はグー、ジャンケンポイ!」 二人は心行くまで鬼ごっこを堪能した。 一人では決して出来ない遊び。ティアとアルクは友達がいる喜びを噛みしめながら思いっきり遊んだ。洋服が埃まみれになり二人の顔が夕日のオレンジ色に染まり始めた。そろそろ寮に帰らなければならない時刻だ。 「そろそろ帰らないと。アルクは2年生だから二階だね。寮まで一緒に帰ろう。」 この学校の生徒は全員寮生活だ。だから当然アルクも一緒に寮に帰るものだと思っている。 しかしアルクは唇を噛みしめながら首を横に振った。ティアは不思議に思った。 「僕は寮には帰らない。僕の家はローレイさんの家なんだ。」 「そうなの?」 そしてアルクは寮ではなくローレイの家に帰る理由をとつとつと話しはじめた。
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