今日は朝からとてもよく晴れていて、空は抜けるように青く、雲は洗い立てのコットンのように白い。まるで空までもティアとアルクの新たな旅立を祝福しているかのようだ。 高くそびえたつヘロン王国の防壁に、流れていく雲の影が落ちて、その影を子供たちが無邪気に追いかけていく。 防壁に作られた立派な門のところにはティアとアルク、ユイハやミライがいる。ユイハたちはティアとアルクを見送りに来たのだ。 「やはり行くのですね。」 ユイハが残念そうに声をかけた。 「えぇ。今までお世話になりました。本当にありがとうございます。皆さんにはどれだけ感謝しても感謝しきれない。」 ティアが心から礼を言うとユイハは首を振った。 「それはこちらのセリフです。あなた方のおかげで今の平和な世界があるのですから。これからもここで平和な我が国を見守って欲しいのですが駄目ですか。」 ユイハはこのごに及んでまだ引き留めにかかるのでまるで埒があかない。ティアとアルクはユイハの気持ちを嬉しく思ってはいるがそろそろ行かなくてはならない。二人の心中を察したミライが 「ユイハ、あまりに引き留めると二人が困るよ。私もお二人にはこれからもこの国で暮らして欲しいという思いは山々だが、お二人にはお二人の考えや人生があるというもの。ここは潔く見送ろう。」 さすが亀の甲より年の劫。ミライに説得されてユイハはようやく納得した。 「お二人は確かジャポネ国へ行くのですよね?」 「はい。ジャポネ国の大地にはまだ見ぬ資源があるそうです。他にもまだ隕石が眠っているかもしれない。わたしはこの目でそれらをぜひ見てみたいのです。ティアも興味があると言ってくれました。」 アルクは子供のように瞳を煌めかせている。 「では、そろそろ行こうかティア。」 アルクがティアの背中にそっと手を添えるとティアは大きく頷いた。そしてティアとアルクはユイハたちと固く握手を交わす。 「魔王のこと、よろしくお願いします。」 「おまかせください。二度と反乱は起こさせません。」 ユイハの力強い答えを聞いてティアは安堵の表情を浮かべた。 「いつでもこのヘロン国へ戻って来てください。いつでも歓迎します。ここはあなたがたの故郷だ。」 「ありがとう。」 ティアとアルクは心からの笑顔で歩き出した。 「お元気で!!」 ユイハたちが手を振る。 「あなたたちもお元気で。」 それに応えるように二人も元気に手を振った。 ユイハたちはティアたちの姿が見えなくなるまで手を振り続けた。
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