一方、魔王から放たれた暴風に吹き飛ばされた魔物たちもゆるゆると立ち上がった。その中にビレモもいる。ビレモは厭らしい勝利の笑みを浮かべた。 「いよいよ魔王が降臨した。人間界は我々魔物のものだ!」 心の奥から沸々と湧いてくる歓喜と、それに引きずられるように浮かび上がる陰惨な笑み。 「さてと、俺たちも魔王の加勢に加わろうぜ。」 「あぁ。」 ビレモたちが一歩足を踏み出した時だ。 『来るな!!』 突如魔王の声が頭の中に響いた。 「はぁ?」 ビレモたちや他の魔物たちも予想だにしなかった魔王の命令に困惑した。 「魔王、来るなとはどういうことですか。」 ビレモが尋ねた。すると 『は・・・早く!・・ぐっ・・・加勢に来い!!何をしている!』 今度は全く逆のことを言う魔王。ビレモたちの頭の中がこんがらがる。だが加勢に来いというなら行かねばばらない。魔物たちは一斉に動き出した。するとまた 『来るな!!我の命令が聞こえないのか!』 「しかし先ほど加勢に来いと・・・。」 ビレモたちが狼狽している。 『こんな人間ども我一人で始末出来る!余計な手出しをするな!』 魔王らしいと言えば魔王らしい言葉だ。 しかしどこかおかしい。魔王の本音ではないような気もする。何かに抵抗しているような、あるいは抵抗されているような印象を受ける。 しかし魔王の命令は絶対なのだ。違和感を持とうがいつもの魔王の雰囲気とどこか違うと感じようが命令に逆らったら最後、自分たちの命がなくなる。 ビレモたちは魔王の命令に従い、加勢することをやめた。魔王の闘いを見守るしかない。なぁにどうせすぐに魔王の圧勝で終わるはずだとこの時すべての魔物たちが高をくくっていた。
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