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作品名:魔王の器候補は両性体 作者:雲のみなと

第47回   47
「大変だ!!闇が来る!!」
ジュルジュたちが体を震わせながら訴えてくる。
「何!?」
ローレイの体が固まった。
次の瞬間、ものすごい轟音を轟かせながら大地がうねったかと思うと、真っ白な光がスパークした。大気が弾かれたと感じた時、結界が破られた。
「そんな馬鹿な!ティアの結界が破られるなんて!」
アルクが信じられないものを見たという表情でティアを見た。だがティアは覚悟を決めたどこまでも透明な瞳でアルクを見つめる。
「ティア・・・。」
アルクの心臓がズキッと大きく波打つ。鼓動が早鐘を打ち、限界突破して気絶しそうになった。

ゴゴゴゴゴ・・・・。神殿が崩れ始めた。今まで一度も感じたことない尋常ではないくらいに巨大で残忍な魔力が辺り一帯を覆う。
「建物が崩れる!皆、身を伏せろ!」
ローレイが叫ぶ。すぐさま防御態勢をとるジョルジュたち。膨大な土煙、崩れ落ちる柱、落ちてくる天井。
だがそれらがローレイたちの体を押しつぶすことはなかった。ティアが崩れ落ちた神殿の真ん中で凛とした姿で立っている。結界を再び張り皆を守ったのだ。
破られても何度でも立ち上がるその姿。
「ティア、そなたというやつは最後の最後まで・・・。」
ローレイの頬から涙がこぼれる。
「みんな!あれを見て!」
コナーが空を指さして叫んだ。空には背筋も凍るようなおどろどろしい黒い闇がとぐろを巻いている。そこから肌を切り裂くかと思うほどの邪悪な魔力が放たれたと思ったら再びティアの結界は破壊された。
「ティアの結界がこうも糸も簡単に何度も破られるなんて信じられない。」
「あれが魔王か。」
ローレイは呟いた。それを耳にしたトレイは。
「魔王!?しかし魔王は人間界では生きられないはず。どうしてここにいるんだ!?」
「魔王は賭けに出たんだ。」
「賭けに?」
「魔王だとて必死だ。ティアが死んだら永遠に器を失うことになる。その前にティアの体を乗っ取りにきたのだ。人間界の大気にさらされて消滅するのが先か、ティアの体をのっとるのが先か、これは賭けだ。」
「えっ・・・ティアが死んだら?」
「どういうこと?」
ジョルジュたちは驚いて一斉にティアを見る。そこには己の胸に剣先を向けて魔剣を高く掲げるティアがいた。それはあまりに信じがたくあまりに受け入れがたい光景。
「ティア!!?」
「ティア!やめて!!」
「馬鹿な真似はよせ!!」
皆が一斉に悲痛な叫び声をあげた。
「これが私にとって一番幸せなことなの。」
そう言ってティアはいつもの優し気な笑顔を皆に向け微笑んだ。
そして隣にいるアルクを見つめ
「愛しているわ、アルク。」
「俺も愛してるよ、ティア。」
その言葉を胸に刻んだティアはそっと瞼を閉じ。
次の瞬間、ありったけの力を込めて己の胸に剣を突き刺した。
「ティア!!!」
「いやぁあああ!!」
コナーの泣き声が。ジョルジュやマリー、トーマスたちの悲痛な叫び声が空気を引き裂く。

ガガガガガガ・・・ソウハサセン!!
大気を掻きむしるような金属音の呻き声をあげる黒い闇がティアの元へと飛んでいく。
魔剣がティアの胸に突き刺さるのと魔王がティアの体に飛び込むのはほぼ同時だった。
閃光が走り、ティアの体から突風が吹き乱れ、魔物たちが吹き飛ばされた。ジョルジュたちは飛ばされまいと地面に身を伏せ必死にしがみついた。

やがて突風はやみ、土埃も鎮まった。ローレイたちは恐る恐る立ち上がった。崩壊し無残な荒れ地となった真ん中でアルクが膝まづいている。アルクの目の前には胸に魔剣を刺したまま固く瞼を閉じ横たわるティアの姿があった。その服は血で真っ赤に染まっている。
「アルク・・・。」
呆然自失しているアルクの姿がいたたまれなくなって皆が目を背けた。
「魔王はどうなったのか。」
トレイが呟いた。その時だ。
突然ティアの瞼が開いた。
「!?」
しかしティアの瞳は皆が知っている美しいエメラルドグリーンではく、見たこともないような赤紫に染まっていた。
「ティア!?」


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