ローレイとポールが憐憫に浸っているところへ一人の騎士がやって来た。名を『トレイ・ハドソン』という。トレイは4年前からローレイの相棒となった騎士だ。人望が厚く、騎士としての腕も確かで各国の騎士団とも交流があり使える男だ。トレイはローレイに見込まれて魔術師に付く騎士にならないと誘われそれから行動を共にしている。 トレイは落ち着いた低い声でローレイにさっそく報告をする。 「ローレイ、悪い知らせを持ってきた。」 「なんだ。」 ローレイとポールに緊張が走る。 「近頃黒魔術師たちが妙な動きを見せているのが気になったので黒魔術師の一人を大金で釣って情報を聞き出した。最近のことだが黒魔術師が魔力を持つ者には見ることが出来ない矢を発明したらしい。」 「魔力を持つ者には見ることが出来ない矢!?」 ローレイたちは警戒心をあらわにする。 「どのような呪いが掛けられているかは魔術師でない俺には分からないが、魔力を持つ者には見えなくて魔力を持たない人間は見ることが出来る矢だそうだ。となると・・・」 「その矢のターゲットは我々白魔術師ということだな。」 ローレイは表情を曇らせる。 「あぁおそらくな。当分警戒したほうがいいぞ。」 黒魔術師は白魔術師をこの世から駆逐しようと目論んでいるのだ。魔力を持つ者には見えない矢を使って抹殺する気だろう。ローレイとポールは苦虫を潰したような表情になった。 「魔物だけではなく人間とも対峙しなければならないとはな・・・。とにかく対処しよう。トレイ、各国の騎士団に掛け合って各地にいる白魔術師たちの護衛にあたってもらえるよう交渉してくれないか。」 「了解した。他に出来ることは?」 「もし矢を発見なり手に入れることが出来たらすぐに私に渡して欲しい。矢がどのように作られたか解明し呪いを解く方法を考える。」 「分かった。これから騎士団に掛け合ってくる。」 トレイは華麗に身をひる返し風のように去っていった。全く頼りになる男だ。 「これは厄介なことになってきましたな、ローレイ様。」 「あぁ、生徒たちに危害が加えられないように我々もここの警備をより厳重にしよう。」 「かしこまりました。」 不穏な風が校舎を吹き抜けていく。
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