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作品名:魔王の器候補は両性体 作者:雲のみなと

第26回   26
それならティアも一緒にソダムに連れて行けばいいだけとナタリーは言う。
しかしそれは出来ない。なぜならばティアはソダム国に入国することを禁じられているからだ。ティアだけではない、魔力を持つ人間はソダムに入国出来ないのだ。
そればかりかソダムで生まれた赤ちゃんがもし魔力を持って生まれてきたら容赦なく国外追放される。

こういうことになったのには深い事情がある。昔は魔力を持つ者、魔力を持って生まれてきた者、どちらも迫害されることも差別されることもなくソダム国で平和に暮らしていた。それがあの世紀に残る悪夢のような大事件のせいで歴史は大きく変わってしまった。

今から250年前のほど前のことだ。ソダムと隣国であるタイラ国は良好な関係を築いていた。両国の交流は盛んに行われ両国の国民たちはこの友好関係がこの先もずっと続くと思っていた。両国の国王もそれを疑うことはなかった。
しかしこの平和な両国に暗雲が立ち込めることとなる。
その年の冬。ソダム国に一人の魔術師が入国してきた。この男はオサと呼ばれ一見人畜無害の顔をしているが実は裏の顔があったのだ。オサは黒魔術師だった。

この世界の魔力は大きく分けて3種類に分類される。
魔物たちが持つ魔力。
白魔術師が持つ魔力。
黒魔術師が持つ魔力の3つに分かれる。
この白魔術師の魔力と黒魔術師の魔力に力の差はなくまた質もたいして変わらない。その人間がどのような目的で魔力を使うかで白魔術、黒魔術に分かれるのだ。
白魔術師は魔術師の全体の割合の9割を占め、主に魔物たちから人間を守ったり、病気や怪我を治したりと人間の役に立つ魔法を使う者たちの総称で、反対に黒魔術師は人間を呪ったり傷つけたりする魔術を使う者たちのことを指している。ちなみにローレイやティアたち、ヘロン魔法学校卒業者は白魔術師に分類されている。
だが、悲しいことだが一部の人間たちは黒魔術を崇拝している。なぜなら黒魔術師の呪いの力を借りてライバルや敵対する者を殺したり失脚させるためだ。
そして黒魔術師たちは敵対関係にある白魔術をとても疎ましく思っていた。白魔術師たちは人間にかけられた黒魔術の呪いを次々と発見し片っ端から呪いを解除、または排除した。
黒魔術師が人間を殺めようとすればそれを阻止してくる白魔術師。黒魔術師たちは逆恨みし邪魔な白魔術を駆逐しようと目論んだ。
それにはソダム国に住んでいる魔力を持つ者すべての駆除が必要だと考えたのである。

ソダム国は他の国と比べ魔力を持つ者が多く誕生する不思議な国だった。その為、魔力の正しい使い方や倫理道徳を叩きこむ授業が幼い頃から一般的に行われていたくらいだ。それによりソダム国の魔力を持つ者はほぼ100%白魔術師となっていた。
この状況が面白くないオサはソダム国で魔力を持つ者を抹殺し黒魔術の勢力の優勢にしようと目論んだのである。
しかし単純にソダム国の魔術師たちを抹殺していったのではすぐに黒魔術が裏で暗躍しているとばれてしまう。そこでオサは魔力を持たない普通の人間を使おうと考えたのである。
オサは巧妙にソダム国の国王に近づき「タイラ国に攻め入りその資源と領土を奪えばソダム国は世界随一の大国になれる」と魔術の力で洗脳したのである。
ソダム国王はオサに操られるまま自国の騎士団を総動員させタイラ国に攻め込んだ。
これに驚いたのはタイラ国民とタイラ国王だ。彼らからしてみれば寝耳に水とはまさしくこのこと。昨夜まで仲の良かった友人が突然別人のようになって襲い掛かってきたのだ。
困惑し狼狽し必死で逃げ惑った。しかしソダム騎士団は逃げ惑うタイラ国民を背中から撃ちまくる。これに激怒したのはタイラ国王だ。自国の騎士団をすぐさま発動させソダム騎士団を迎え撃ったのだ。
まさしくこの時、250年戦争の火ぶたが切って落とされたのである。
オサの真の目的はこの戦火に紛れてソダム国の白魔術師たちを暗殺すること。タイラ国の騎士団の仕業に見せかけて次から次へと魔力を持つ者なら子供から大人まで暗殺していった。
世界の目から見ればソダム国王が欲望に目がくらんで隣国のタイラ国に攻め入ったようにしか映らない。

しかし直にこれが黒魔術の陰謀だということに白魔術側が気づいた。この戦争を止めるにはまずはソダム国王の洗脳を解くことが先決と考え国王に近づき洗脳を解いた。
ソムダ国王はなんてことをしてしまったのだ!!と死にたくなるほど反省し後悔した。そしてタイラ国にただちに停戦を申し込んだのである。
しかしそんなことはタイラ国と国民からしてみれば納得出来ない。いくら黒魔術に操られていたからといって大切な家族や友人をたくさん殺されたのだ。ソダム国への憎悪と復讐心は消えることはなかった。
白魔術師たちによってオサは殺されたが事態が好転することはない。事の重大さに悩んだソダム国王はすべての元凶は魔術にあると考え、魔力を持つ者全員を国外に追い出すことにした。
黒魔術だけではなく白魔術も排除した。白魔術の考えを持つ者がなにをきっかけにして黒魔術に転じるか分からない、あらゆる火種の可能性を消すために。
しかし自国から全く魔術師がいなくなれば今度は自分たちが魔物たちの格好の獲物になりかねない。
そこでソダム騎士団に魔剣や魔道具を持たせた。普通の人間でも高い身体能力があれば魔物にある程度は抵抗出来た。そして国王は失われたソダム国の名誉を取り戻す為に他国にも赴き魔物退治をするように命じたのである。

こうしてソダム騎士団は名誉を回復し各国から称賛を浴びることになっていったのだがそんな姿を見たタイラ国王とタイラ国民はよりソダム国への憎悪をますます深めていった。自分たちの家族はソダム騎士団に殺されたのに世界はソダム騎士団を称賛している。それがどうしても許せなかった。
そういうこともあり、ソダム国とタイラ国の闘いは停戦と開戦を繰り返しながら250年続いたのである。それがようやく一か月前に終戦した。250年の月日を要してやっと憎悪の連鎖が薄れてきたのか一時的な停戦なのかは今はまだ分からないが。
こうした悲しい過去と歴史があるからソダム国に魔術師は入国出来ないのである。


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