空に触れたい。 あの青い空に触れたい。 限界まで手を伸ばしたら触れることが出来そうな気がして踵を上げる。 上げてみるけれど・・・。 思っていたより空は遠い。 この拙い指先ではあの空に触れることは出来なかった。 空を掠めることなく終わった指先をみつめ、名残惜しく青を見上げる。
夢を叶えるということはこんなにも難しい。
ため息で曇る大気の中を今、何も知らない鳥が横切っていく。 もし鳥に生まれていたら今頃私はあの空と戯れていただろう。 でも私は鳥ではないから。 人間に生まれたからにはこの大地から離れるわけにはいかない。 自由な大空に憧れながら、行く手を阻む困難をがむしゃらにかき分けながら、堅実に一歩ずつ目の前に続く道を歩いていく。 時には多大な犠牲を払いながら。 そうまでしても果てしないこの道の先にある人生の終着駅は求めてやまないあの空の中にはない。 あくまでもこの大地の上に私の人生の終わりがある。 でもそれでもいい。 それがいい。 人生が終わるその時まで尽きることなく恋い焦がれるものがあるのはとても幸せなことだから。
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