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作品名:陽だまりという名の喫茶店 作者:雲のみなと

第6回   恋の亡骸は捨てて
「今日」と「未来」を繋ぐ橋。
今、私がいるこの岸の名は「今日」
橋の向こう岸が「未来」
今日と未来を繋ぐこの橋を渡ったその先に生涯色褪せることのない愛があるというのなら私は橋を渡るだろう。
人生の結末をひた隠しする嵐がどれほど橋を揺さぶっても
過去に流した涙が激流となって橋桁を崩そうとしても渡ることをやめない。

かつての日々。
約束を愛の言葉で飾り立て、二人の手のひらでそれを温めて古から変わらずに煌めく水面に浮かべ見つめあい、抱き合い、他愛のない日々を過ごしたあの日々はもう二度と戻ってこない。
私が手放してしまったのはあなただけではない。
愛そのものを手放してしまったのだ。
後悔は闇より深く、雪面に反射する日差しより強い。

だからこの橋を行くことを決めた。
もう一度愛を取り戻せるなら今度こそ歩むことをやめたりしない。
四六時中橋は揺れ「今引き返せばまだ間に合う」と風が忠告してくる。
それでも歩みを止めることはない。
向こう岸に愛があると信じてがむしゃらに前に進むことでしか私が私を生かす術がないから。
恋の亡骸を抱いて空っぽのまま生きていくのはもう限界なんだ。


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