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作品名:陽だまりという名の喫茶店 作者:雲のみなと

第10回   息をのむほどに美しい風景にありがとう
この世界にありがとうと言いたい。
たくさんの美しいものを見せてくれてありがとう。
悲しいこと、辛いこと、たくさんあったけれど今思うのはそれら全てが美しい風景に繋がっていた。
随分長いこと暗いトンネルの中を一人で手探りで歩いてきたけれど
ようやく目の前に差し込んできた光の先にあったものは、太陽の恵みをいっぱいに受けて蒼く輝く樹々や際限なく広がる空だった。
それらを見た時に、この世界にあるたくさんの美しいものをより美しく見せるために今までの悲しみや孤独があったのだと分かった。
朝も夜も絶え間なく一呼吸一呼吸を気が遠くなるほど繰り返し、長い月日をかけて知るのは人を愛し愛されるということがこんなにも尊く美しいものだということ。
愛は息をのむほど美しい。
その美しさは夜空を流れる天の川をも超えていく。
トンネルの中をひたすら歩き続けて暗闇にも慣れ、一人でいることにも慣れてきた頃に辿り着いた出口の真ん前に広がる天の川。
暗闇に慣れるなんて天の川を知ればただの嘘だということに気づく。
孤独に慣れたなんて愛を知ればただの強がりだと気づかされる。
天の川に抱かれながら愛の言葉を呟き、今宵ひと時の眠りにつこう。

どんな結末にも美しい風景を用意してくれているこの世界にありがとう。


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