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作品名:言の葉の港 作者:雲のみなと

第2回   雨が降ると天を仰いだりしませんか
   雨が降ると天を仰いだりしませんか


雨が降る度に思うのですが・・・。


なぜ人は雨が降ると天を仰ぐのでしょうか。


一体何が見たくて見上げるのか。


雨雲?


晴れ間?


いいえ、雨に交じって落ちてくる何かをいち早く見つけたいからでしょうか。


それを見逃さないためでしょうか。


その何かとはなんでしょう。


私にとってはそれは「慰め」なのですが


あなたにとっては何でしょうか。


「運命のように転がる愛」でしょうか


それともそれを叱咤する冷静なもう一人の自分でしょうか。


雨が降ると天を仰いだりしませんか。



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     産業道路


うっすらと排気ガスが臭う歩道橋から辺りを見渡すと

ビルもマンションもずっと遠くに見える。

春霞に覆われたように霞むその風景はまるで屋根付きドームの中に

乱雑に置かれたおもちゃみたいだ。

人気のない歩道をのら犬はあてもなく歩いている。

路肩の樹木の葉影の下をトラックだの乗用車がせわしく走っていく。

当たり前の話だが運転手はみんなまっすぐ前だけを見てハンドルを握っている。

そう、ここは産業道路だ。

時間に追われ時計の針のように皆正確。

こんなにひっきりなしに車が走っているのにさっきからバスは一台も見かけない。

人影も落ちない産業道路、やけに小奇麗でまっすくな道。

バス亭など必要ない、ここに立ち止まる人などいやしないのだから。


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