20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:物足りないかもな不思議体験 作者:雲のみなと

最終回   虫の知らせ
虫の知らせというのは本当にあると思います。
それは私の母が亡くなった時のことです。
母は病気で3年以上も病院のベットの上でした。
私は仕事を終えると毎日病院にお見舞いに行っていたのですが母には意識がなく私はいつもベッドの横の椅子に座り、眠り続ける母の顔を見つめるだけの日々を過ごしていました。
だがとうとうその時は来てしまいました。
母が天国へと旅立つ日が・・・・。
その朝もいつもと変わらないはずでした。時刻は朝の6時、私はまだ夢の中です。でも夢の中なのになぜか「はぁはぁ」という荒い息遣いを耳元に感じたのです。その生々しい感覚がとても夢の中の出来事とは思えなくて思わず目を覚ました。
ふと時計を見ると針は6時を指していました。あの荒い息遣いはなんだったんだろうと不思議に思いながらも二度寝を試み、ようやく眠りについた頃
「トュルトュルトュルトュル・・・」
電話が鳴ったのです。
こんな朝早くになんだろうと眠気眼をさすりながら電話に出ました。そこで告げられたのは母が亡くなったということ。看護師さんの話では痰を喉に詰まらせてしまったことによる窒息死。母は長いこと意識不明で動けず、痰吸引も決まった時刻に看護師さんが行ってくれていたのですが、看護師さんがいつものように母の容態を見に行ったら母はもうすでに・・・。看護師さんは泣き声で話してくださいました。母が亡くなった正確な時刻は分からないけど看護師さんが言うには6時頃だろうと。
私はその話を聞いてはっとしました。あの荒い息遣いが聞こえたのも6時頃。
母はもしかして私に苦しいと知らせに来たのかもしれません。それとも私に会いに来てくれたのか。
母の気持ちは分からないけど私は母が病気で倒れてからずっと後悔のしっぱなしでどうしてもっと母の体を労わってあげられなかったのだろう、なぜ母のSOSに気づいてあげられなかったのだろう、もっと母を大切にすれば良かったと毎日毎日後悔と罪悪感でいっぱいでした。だから私は母が最期に会いに来てくれたと思いたいのです。そうでなければ母に何もしてあげられなかった私の心が押しつぶされそうで。
母の四十五日を迎える少し前、母が私の夢の中に出てきてくれました。そこで母は言ったのです。
「無事成仏したよ。」と。
夢の中でその言葉を聞いて心からほっとしました。母にとって辛い3年3か月、私にとっても同じでした。
母は今も天国で幸せに暮らしてくれていると信じています。
そして考えさせられたことは人間はいつどうなるか分からない、明日を生きて終える保証はどこにもない。
だから家族を友達を愛する人をそして自分自身を大切にして生きていかければならないとつくづく思うのです。


← 前の回  ■ 目次

■ 20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ トップページ
アクセス: 2713