ふたりあやとり
あなたがあやとりを差し出す。
私はそのあやとりに指を落とし田んぼを作る。
するとあなたはその田んぼに指を絡め川を作った。
次に私が川を船に変え、今度はあなたが船を蛙に変えた。
目を合わせては微笑みあい、何度も何度もあやとりを繰り返す。
そうやって二人で作り上げた幸せな田園風景。
私たちは子供のように無邪気にじゃれ合い
名前も忘れた寂れた街角で抱き合い
ある日突然、西日が溢れる黄昏の部屋であなたが別れの言葉を口にした。
そして今、二人で描いた田園風景にあなたはいない。
私のこの手にあるのはあなたのぬくもりが残るあやとり
いいえもはやあやとりなどではなく、愛する人を失ったただの一本の赤い糸。
赤い糸を濡らす、やがては消えゆく感傷がここにあるだけ。
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