都会の夜の底
漆黒の海にホタルイカ撮りの漁船の灯が揺らいでいる。
あまりの綺麗さに目を凝らしてもっとよく見つめたら
それらは帰りを急ぐ車の群れだった。
テールランプの赤やヘッドライトの青の灯が都会の夜の底に潜り込み
それを操る人々はそれぞれの寝床へ滑り込んでいく。
真珠色の光の玉がビロードの空から零れ落ちぶら下がっている。
その豪華さに心奪われ、目を凝らしてよく見たら高層ビルの窓明かりだった。
都会の夜は地上に転がるあらゆる宝石をかき集めてきたかのような賑わいだ。
なのにどこか虚しい。
どこか希薄でどこまでも儚い。
うたかたの夢というものはこういうものなんだろう。
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