区切り
時計の針は朝の6時ちょっと過ぎを指していた。
私は産業道路を急ぐ。
前方に見えてきたのは工場の煙突。
その先端から出ている煙が朝焼けに染まって桃色の狼煙を上げている。
まるでここが一日の出発地点だと宣言するかのように勇ましくどこまでも厳かに。
その工場の中にはすでに働く人々がいて
昨日と寸分たがわぬ動作を繰り返しているのであろう。
時にはその手を休めて窓の外を眺めることはあるのだろうか。
凍てつくような大気の中を淡々と流れていく時間。
時間には本来名付け親はいない。
それこそ永久に自由。
なのに人間が勝手に己の利便性の為に仮の名前をつけたのだ。
7時、10時、12時、15時、19時、21時、23時、24時・・・。
区切られた時間。
暮らしていくには区切られていた方が便利だけど
時にその区切りに追い立てられているような気分になる。
早く先へ行け、区切りがすぐ後ろまで迫ってきている、と。
区切りというものはいわば人を先へと縛るもの。
私はもう一度時計を見た。
遅れてはならぬと職場へと足を速める。
煙突の煙は変わらずに私の背中で立ち上っていることだろう。
でも振り返っている時間はない。
皆同じだ。
皆それぞれに束縛されながら必死で今を生きている。
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