時代遅れの狩人
  怠惰という魅惑の森の中で先住民のようにその日その日を暮らしてきた。
  訪問者は少なく、ひたすら黄昏を話相手にして。
  英知などは欲しがらず居心地の良さだけを求めて生きてきた。
  森の外にある厳しい季節の移り変わりに置いてきぼりにされているとは知らずに。
  しかしある日突然そんな私に向かって一本の矢が放たれた。
  「外を見ろ。」という天からの指図のように私の胸を貫く。
  木々の根が張る大地に倒れ込み初めてそこで生命の息吹を聞いた。
  生きていかなければいけないという必死な声を聞いた。
  私は今、青臭い大地に釘付けにされながら空を見上げている
  木の葉の隙間から覗く青空もその中を進みゆく雲の群れも皆そこにありたいと懸命だ。
  その懸命さは私がいつしか忘れていたもの。
  倒れ込まなければ気が付かずにいたものをこうして見せられている。
  今日はあっという間に過去になり瞬く間に時代は移りゆく。
  私はこのままでいいのだろうか、こうして時代の行き来を見送るばかりで
  果たして済まされるのだろうか。
  いや、このままでいいはずがない
  この怠惰の森を卒業し、かつて欲したものを狩りにいってこそ
  生まれてきた甲斐があるというものだ。
  時代おくれの狩人と他人から言われてもいい、今からでも遅くはないはずだ。
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