短い花火大会
  傘なんてさしても悲しくなるだけじゃない。
  さしたところで雨がやむわけでもあるまいし。
  ならばいっそう濡れるだけ濡れて嘘でも笑ってしまえばいい。
  雨が降り始めたのにそれでも花火を打ち上げるなんて
  人はそんなに救われたいの?
  綿あめを握りしめた手に細い銀の糸が落ちてくる。
  その糸を掬い取って花火が咲くであろう闇を見上げた。
  上がらない花火。
  短い花火大会が終わった。
  さっきまで斜に構えていた心が威勢虚しく萎んでいく。
  なんやかんやいっても楽しみにしていたのだ。
  そして昨夜と同じような静寂を約束された闇が
  傘を閉じるようにやってきた。
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