手の中にある届かない手紙
  空はどこまでも続いているように見える。
  でも人生は違う。
  黄昏が遠い日の記憶をやけに美しく切なく見せる。
  その切なさはもろ刃の剣で裏を返せばたまらない刹那。
  ともすればこの胸を突きたくなる衝動に駆られるけど
  報われなくても折れたりせずにちゃんと明日を迎えることを
  帰路を辿るこの足の一歩一歩と約束しよう。
  とはいえ心は弱いもの。
  紫陽花色の夜の上澄みにこの身を落とす時
  胸に沁みこんでくるのは無邪気な子供の頃の思い出ばかり。
  失ったものは二度とは戻らない。
  そんなこと分かっていてもやっぱり取り戻したくて闇夜の底に潜る毎夜。
  そこで見つけたものに手を伸ばすけど手にしたのは容赦のない現実。
  あなたに会いたいのに会えないという現実。
  諦めきれずにあなたへと手紙を書くけどそれはきっと届かないだろう。
  だってあなたの住所は遠い遠い空の中だから。
 
 
 
 
 
 
 
 
  
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