「タイ米も、料理の仕方によっては、けっこう美味しいですよ。」 「よく召し上がるんですか?」 「よくは召し上がりませんけど。年に十回前後は。」 「どのようなものを?」 「中をくりぬいたパイナップルを器にした、パイナップルチャーハンです。こぉ〜れがなかなかのものなんですよ〜。」 「なかなかの美味しいですか?」 「はい。」 「具は?」 「具は、エビ、鶏肉、カシューナッツ、ピーマン、玉ネギ…だったかな?」 「さすがに詳しいですねえ。」 「スパイシーに味付けされていて、パイナップルの甘みと相まって、とってもグーなおいしさなんです。」 「葛城さんが解説すると、なんだか美味しそうですねえ。」 「あっ、そうだ!青森パイナップルと合体して、青森の名物にしたらどうでしょう?」 「え〜〜〜?」 「きっと売れると思いますよ。帰ったら、早速に青森のホームページに書き込みましょうか?」 「えっ?」 「きっと、それを見た知事が喜んで、表彰状をくれますよ。」 「想像力が豊かですねえ。」 「ひょっとしたら、お礼に一番に食べさせてくれるかも知れませんよ。」 「そこまで、行きますか?」 「どこまでも行きますよ、日本は狭いですから。」 「そんなに美味しいんだったら、タイ米もいいかも知れませんね。」 「馴れですよ。なんでも馴れですよ。」 「でも、おにぎりは無理でしょう?」 「…そうですねえ、パサパサしてますからねえ。」 「やっぱり、ジャポニカでないと無理ですね。」 「餅米を混ぜればいいんじゃないですか?」 「タイ米と餅米のおにぎりですか?」 「はい。おいしいかも知れませんよ。」 「そうですかねえ?」 「きっと美味しいですよ。」 「そういうアイデアは、どんどん出てくるんですね。」 「はい。どんどん際限なく出てきます。」 「凄いですねえ。」 「まだ出しましょうか?」 「もういいです。でも、好き嫌いの激しい人もいますからね〜。」 「そういう人は、もう生きていけません、これからは。」 「そういうことになりますね。」 「これからは、何もかも変わって来ますよ。」 「鮭(さけ)や秋刀魚(さんま)も獲れなくなってるって言うし。」 「何んでですか?」 「海水温が高いんです。日本付近は、もう鮭(さけ)や秋刀魚(さんま)の近づけない海水温になっているんです。一度上昇すると、魚の種類も変わってくるそうです。海草なんかも育たなくなっているし。」 「北海道の昆布なんかもですか?」 「はい。」 「でも、代わりに高い海水温の魚が獲れるんじゃないですか?」 「はい。マンボーとか獲れています。」 「あれ、けっこう美味しいんですよ。」 「そうなんですか?」 「空ばっかりかと思ったら、海の温度も高くなっているんですね。」 「はい。」 「原因は二酸化炭素なんですね。」 「はい。メタンガスとかもありますけど。」 「だったらこうすればいいんですよ。」 「えっ?」 「二酸化炭素なら、ドライアイスになりますよね。」 「はい。」 「だったら、ドライアイスにしてしまえば冷えるんじゃないんですか?」 「はっ?」 「ドライアイスって、超冷たいですよ。」 「はい。」 「あれを、そこいらに撒けば?」 「なるほど…」 そんなこんなを話しながら歩いているうちに、二人は模型飛行場の前にいた。 「その話は後でしましょう。」 「はい。」 二人は中に入って行った。誰もいなかったので、アニーは呼んだ。 「おねがいしま〜〜す!」 若い男が出てきた。 「はい、いらっしゃいませ。」 「模型飛行機を操縦したいんですけど。」 「ちょっと待っていただけますか?」 「どのくらい?」 「そうですねえ、五分ほどです。今操縦されてる方が終わったら。」 「終わったら?」 「二機はないんですよ。一緒に飛ばすと危ないので。」 「ああ、そうなんですか。じゃあ待ってます。」 二人は、近くにあった陽除けの屋根のある椅子に腰掛けた。アニーは空を見た。 「午後から、少し暑くなるって言ってましたね。」 「はい。」
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