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作品名:高野山 人間村 作者:毬藻

第93回   ドライアイス
「タイ米も、料理の仕方によっては、けっこう美味しいですよ。」
「よく召し上がるんですか?」
「よくは召し上がりませんけど。年に十回前後は。」
「どのようなものを?」
「中をくりぬいたパイナップルを器にした、パイナップルチャーハンです。こぉ〜れがなかなかのものなんですよ〜。」
「なかなかの美味しいですか?」
「はい。」
「具は?」
「具は、エビ、鶏肉、カシューナッツ、ピーマン、玉ネギ…だったかな?」
「さすがに詳しいですねえ。」
「スパイシーに味付けされていて、パイナップルの甘みと相まって、とってもグーなおいしさなんです。」
「葛城さんが解説すると、なんだか美味しそうですねえ。」
「あっ、そうだ!青森パイナップルと合体して、青森の名物にしたらどうでしょう?」
「え〜〜〜?」
「きっと売れると思いますよ。帰ったら、早速に青森のホームページに書き込みましょうか?」
「えっ?」
「きっと、それを見た知事が喜んで、表彰状をくれますよ。」
「想像力が豊かですねえ。」
「ひょっとしたら、お礼に一番に食べさせてくれるかも知れませんよ。」
「そこまで、行きますか?」
「どこまでも行きますよ、日本は狭いですから。」
「そんなに美味しいんだったら、タイ米もいいかも知れませんね。」
「馴れですよ。なんでも馴れですよ。」
「でも、おにぎりは無理でしょう?」
「…そうですねえ、パサパサしてますからねえ。」
「やっぱり、ジャポニカでないと無理ですね。」
「餅米を混ぜればいいんじゃないですか?」
「タイ米と餅米のおにぎりですか?」
「はい。おいしいかも知れませんよ。」
「そうですかねえ?」
「きっと美味しいですよ。」
「そういうアイデアは、どんどん出てくるんですね。」
「はい。どんどん際限なく出てきます。」
「凄いですねえ。」
「まだ出しましょうか?」
「もういいです。でも、好き嫌いの激しい人もいますからね〜。」
「そういう人は、もう生きていけません、これからは。」
「そういうことになりますね。」
「これからは、何もかも変わって来ますよ。」
「鮭(さけ)や秋刀魚(さんま)も獲れなくなってるって言うし。」
「何んでですか?」
「海水温が高いんです。日本付近は、もう鮭(さけ)や秋刀魚(さんま)の近づけない海水温になっているんです。一度上昇すると、魚の種類も変わってくるそうです。海草なんかも育たなくなっているし。」
「北海道の昆布なんかもですか?」
「はい。」
「でも、代わりに高い海水温の魚が獲れるんじゃないですか?」
「はい。マンボーとか獲れています。」
「あれ、けっこう美味しいんですよ。」
「そうなんですか?」
「空ばっかりかと思ったら、海の温度も高くなっているんですね。」
「はい。」
「原因は二酸化炭素なんですね。」
「はい。メタンガスとかもありますけど。」
「だったらこうすればいいんですよ。」
「えっ?」
「二酸化炭素なら、ドライアイスになりますよね。」
「はい。」
「だったら、ドライアイスにしてしまえば冷えるんじゃないんですか?」
「はっ?」
「ドライアイスって、超冷たいですよ。」
「はい。」
「あれを、そこいらに撒けば?」
「なるほど…」
そんなこんなを話しながら歩いているうちに、二人は模型飛行場の前にいた。
「その話は後でしましょう。」
「はい。」
二人は中に入って行った。誰もいなかったので、アニーは呼んだ。
「おねがいしま〜〜す!」
若い男が出てきた。
「はい、いらっしゃいませ。」
「模型飛行機を操縦したいんですけど。」
「ちょっと待っていただけますか?」
「どのくらい?」
「そうですねえ、五分ほどです。今操縦されてる方が終わったら。」
「終わったら?」
「二機はないんですよ。一緒に飛ばすと危ないので。」
「ああ、そうなんですか。じゃあ待ってます。」
二人は、近くにあった陽除けの屋根のある椅子に腰掛けた。アニーは空を見た。
「午後から、少し暑くなるって言ってましたね。」
「はい。」


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