みんなはパソコンを見入っていた。 「あれっ?どうしたの皆さん?」 ポンポコリンが傍にやってきて、今までの経緯(いきさつ)を話した。 「え〜〜っ!?」 一様に驚いていた。 「隼人さんは、大丈夫だったの?」 「何が?」 「何事も無かったの?」 「小次郎に二度も遭遇して、疲れちゃったよ。」 「そうなの〜!?で、どうしたの?」 「ちょいちょいと、やっつけたよ。」 「え〜〜〜っ、凄いなあ〜。どうやってやっつけたの?ひょっとして風魔の忍術?」 「そんなの使わないよ。」 「じゃあ、どうやってやっつけたの?」 「磁石とスプレー缶で。」 「磁石とスプレー缶で?」 「どうってことなかったよ、ムサシはアホだから。」 「ふ〜〜〜ん、さすが忍者だわ!」 龍次は、女の方に顔を向けていた。 「彼は、高野山のどこにいるって、言ってたんですか?」 「人間村って言ってました。」 「そうなんですか…、それはきっと嘘ですね。」 「じゃあ、どこに?」 「きっと、言えない秘密の場所だったんでしょう。」 「秘密の場所?」 「彼らは、非合法集団ですから。」 子供が起きた。 「母ちゃん、どうしたの〜?」 母親は、ソファーに戻り座った。 「何でもないのよ。」 「父ちゃん、まだなの?」 母は子供の顔を見て、悲しく答えた。 「まだよ。」 「遅いねえ。」 「今日は帰って来ないって、帰りましょう!」 「え〜〜〜っ、帰るの〜〜!」 「仕方がないわ。」 「明日は帰ってくんでしょう?」 「明日も帰って来ないのよ。帰りましょう!」 「いやだよ〜〜〜!」 母は、子供の手を取って出て行こうとした。子供は泣き出した。 「いやだよ〜〜〜!」 「帰るのよ!」 「どこに帰るの〜〜!?」 龍次が、やって来た。 「帰られるんですか?」 「はい。」 「帰る場所はあるんですか?お金はあるんですか?」 「…はい。」 龍次は、女の目を見ていた。 「あなたの目は、嘘を言ってる。」 「大丈夫です。」 「ほんとうは、帰る場所も、お金も無いんじゃないんですか?」 女は泣き出した。 「はい。」 「だったら、ここに居てもいいんですよ。」 「えっ!?」 「ここに居てください。」 「えっ、見ず知らずの私たち親子のために、どうして?」 「わたしたちは、皆兄弟ですよ。一緒に頑張りましょう!」 女は、大きな声で泣き出した。 「実は、もし彼がいなかったら、この子と一緒に死のうと思ってたんです。」 子供も大きな声で泣き出した。 「母ちゃん、死ぬのはいやだよ〜〜〜〜〜!」 龍次は、大きな声で怒った。 「ばかやろう〜!」 みんなは。びっくりして、龍次の顔を見た。龍次は、涙ぐんでいた。必死に涙を堪えていた。 「死んだらいけません!この子のためにも強く生きてください!」 そして、優しく女の肩を叩いた。 「一緒に頑張りましょう!」 みんなもやってきた。そして、合唱するように龍次の言葉を復唱した。 「一緒に頑張りましょう!」 女は泣いていた。子供も泣いていた。ヨコタンが、泣いている子供を抱きかかえた。 「正男くん、大丈夫よ。帰らなくってもいいのよ。」 「帰らなくても、いいの?」 「うん、いいのよ。」 「ここにいても、いいの?」 「ここにいてもいいのよ。一緒に暮らしましょう!」 「父ちゃんにも逢える?」 「逢えるわよ。」 みんなの愛が、弘法大師の慈悲の光のように、深く優しく親子を包んでいた。
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