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作品名:高野山 人間村 作者:毬藻

第85回   六大合掌!
「そう言えば、以前テレビで、ピラミッドパワーというものを見ました。」
「ピラミッドパワー?」
「なぜ、ピラミッドは四角錐なのかという番組です。」
「なにか秘密があるんですか?」
「四角錐と方角にあるということでした。」
「四角錐と方角?」
「四角錐の中心近くでは、物が腐らないというものでした。」
「えっ?」
「それで研究されたのが、ピラミッドパワーというもので、四角錐の中心に食べ物を置くと、味が良くなるとういうことでした。」
「えっ、ほんとうですか?」
「はい。実験で試したら、美味しくなったという番組でした。」
「へ〜〜〜、不思議ですねえ。四角錐だったら、材質は何でもいいんですか?」
「はい。で、ドームハウスも同じような効果があるんではないかと思ったんです。」
「なるほど。ひょっとしたら、そうかも知れませんね。でも、おかしいなあ?」
「えっ?」
「美味しくなるのは、ところてんだけなんですよ。」
「それは変ですねえ。」
「変ですねえ。」
「とっても変です。」
人間村から離れると、民家が数軒あるだけだった。
「この道です。」
「綺麗な道ですねえ。」
「このあたりは、観光客が多いので、整備されているんです。ここらあたりから、奥の院の参道なんです。」
「そうなんですか。」
静けさとともに空気は澄み渡り、真っ赤で可憐な彼岸花が参道の脇に、風に揺れながら咲いていた。姉さんは、思わず少女みたいな声でつぶやいた。
「こういう道には、彼岸花が似合いますねえ。」
「そうですねえ。」
「ここを抜けると、どこに行くんですか?」
「弘法大師の眠る御廟(ごびょう)の裏に辿り着きます。」
「どのくらいで?」
「時間ですか?」
「はい。」
「約十分くらいです。」
近くにクヌギの大きな木があって、その下でリスがドングリを食べていた。
「あっ、リスだわ。かっわいい〜!」
姉さんと目があうと、リスは一目散に逃げて行った。
「あ〜〜あ、逃げちゃった。」
御廟(ごびょう)は、弘法大師信仰の中心聖地だった。転軸(てんじく)、楊柳(ようりゅう)、摩尼(まに)の三山に囲まれた台地にあり、その山裾を清流玉川が流れていた。
「これが、御廟(ごびょう)です。」
僧侶たちや、お遍路姿の信者たちが、経文を唱え御廟に向かって合掌していた。
姉さんは、御廟(ごびょう)の十メートルほど手前で立ち止まった。
「これ以上は駄目です!」
「えっ、どうしたんですか?」
「物凄い何かを感じるんです。」
「何かって?」
「気というか、霊気というか、そういものです。」
紅流合気柔術の達人は、とてもとても強くて異様な気を感じていた。
「…これは、霊合気だ!やばい!」
「霊合気って何ですか?」アニーの知らない言葉だった。
姉さんは、素早く紅流忍び猫足で後退すると、両手を強く合わせて唱えた。
「地(ち)・水(すい)・火(か)・風(ふう)・空(くう)・識(しき)!」
「それは、六大!忍びの呪文!」
姉さんは、目を閉じ動かなくなっていた。
「葛城さん、大丈夫ですか!?」
姉さんは、目を閉じ動かなくなっていた。
「葛城さんは、忍者だったんですか!?」
姉さんは、なにやら両手を組み合わせて奇妙な印を結びはじめた。
「それは、忍者の智拳印!」
「ロックンロール!…駄目だわ、霊気が強すぎる!」
「葛城さん、南無大師遍照金剛!」
「はい!」
姉さんは、印を解くと再び手を合わせた。
「南無大師遍照金剛、南無大師遍照金剛、南無…」



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