「そう言えば、以前テレビで、ピラミッドパワーというものを見ました。」 「ピラミッドパワー?」 「なぜ、ピラミッドは四角錐なのかという番組です。」 「なにか秘密があるんですか?」 「四角錐と方角にあるということでした。」 「四角錐と方角?」 「四角錐の中心近くでは、物が腐らないというものでした。」 「えっ?」 「それで研究されたのが、ピラミッドパワーというもので、四角錐の中心に食べ物を置くと、味が良くなるとういうことでした。」 「えっ、ほんとうですか?」 「はい。実験で試したら、美味しくなったという番組でした。」 「へ〜〜〜、不思議ですねえ。四角錐だったら、材質は何でもいいんですか?」 「はい。で、ドームハウスも同じような効果があるんではないかと思ったんです。」 「なるほど。ひょっとしたら、そうかも知れませんね。でも、おかしいなあ?」 「えっ?」 「美味しくなるのは、ところてんだけなんですよ。」 「それは変ですねえ。」 「変ですねえ。」 「とっても変です。」 人間村から離れると、民家が数軒あるだけだった。 「この道です。」 「綺麗な道ですねえ。」 「このあたりは、観光客が多いので、整備されているんです。ここらあたりから、奥の院の参道なんです。」 「そうなんですか。」 静けさとともに空気は澄み渡り、真っ赤で可憐な彼岸花が参道の脇に、風に揺れながら咲いていた。姉さんは、思わず少女みたいな声でつぶやいた。 「こういう道には、彼岸花が似合いますねえ。」 「そうですねえ。」 「ここを抜けると、どこに行くんですか?」 「弘法大師の眠る御廟(ごびょう)の裏に辿り着きます。」 「どのくらいで?」 「時間ですか?」 「はい。」 「約十分くらいです。」 近くにクヌギの大きな木があって、その下でリスがドングリを食べていた。 「あっ、リスだわ。かっわいい〜!」 姉さんと目があうと、リスは一目散に逃げて行った。 「あ〜〜あ、逃げちゃった。」 御廟(ごびょう)は、弘法大師信仰の中心聖地だった。転軸(てんじく)、楊柳(ようりゅう)、摩尼(まに)の三山に囲まれた台地にあり、その山裾を清流玉川が流れていた。 「これが、御廟(ごびょう)です。」 僧侶たちや、お遍路姿の信者たちが、経文を唱え御廟に向かって合掌していた。 姉さんは、御廟(ごびょう)の十メートルほど手前で立ち止まった。 「これ以上は駄目です!」 「えっ、どうしたんですか?」 「物凄い何かを感じるんです。」 「何かって?」 「気というか、霊気というか、そういものです。」 紅流合気柔術の達人は、とてもとても強くて異様な気を感じていた。 「…これは、霊合気だ!やばい!」 「霊合気って何ですか?」アニーの知らない言葉だった。 姉さんは、素早く紅流忍び猫足で後退すると、両手を強く合わせて唱えた。 「地(ち)・水(すい)・火(か)・風(ふう)・空(くう)・識(しき)!」 「それは、六大!忍びの呪文!」 姉さんは、目を閉じ動かなくなっていた。 「葛城さん、大丈夫ですか!?」 姉さんは、目を閉じ動かなくなっていた。 「葛城さんは、忍者だったんですか!?」 姉さんは、なにやら両手を組み合わせて奇妙な印を結びはじめた。 「それは、忍者の智拳印!」 「ロックンロール!…駄目だわ、霊気が強すぎる!」 「葛城さん、南無大師遍照金剛!」 「はい!」 姉さんは、印を解くと再び手を合わせた。 「南無大師遍照金剛、南無大師遍照金剛、南無…」
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