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作品名:高野山 人間村 作者:毬藻

第80回   トマトと交換
ショーケンとアキラは「仕事があるから。」と言って去って行った。
真由美は、ポンポコリンに質問した。
「三人は、どこに行くの?」
「病院に行くのよ。忍さんが怪我をしたの。」
「どうして怪我をしたの?」
「五郎と相撲をして怪我をしたの。」
「熊の五郎と相撲をしたの〜?」
「そうなの。馬鹿みたいでしょう。」
忍は黙っては聞いてはいなかった。
「馬鹿とは何だよ〜。仕方が無かったんだよ〜。」
ポンポコリンは、忍に謝った。
「ごめんごめん!」
唐突に正男が真由美に挨拶した。
「真由美ちゃん、おはよう!」
大きな声だった。
「おはよう、まさおくん!」
「何してるの〜?」
「トマトを売ってるの。」
「ふ〜〜〜ん。」
ポンポコリンが思い出したように言った。
「あっ、そうだ。熊さんが、卵が余ってるから、後で持って行くって言ってたわ。」
「わ〜、そうですか。じゃあこれから取りに行きます。」
「鳥小屋にいるわよ。」
「はい。」
真由美は、人間村の鳥小屋に向かって歩き出した。ポンポコリンたちは、病院に向かって走り出した。正男が叫んでいた。
「まゆみちゃ〜〜ん、またね〜!」
真由美も後ろを向いて「またね〜〜!」と言った。お互い、霧で見えなくなっていた。神の意思という大きな力で、幼い二人は無意識に共鳴しあっていた。

人間村の熊さんのドームハウスの裏には、大きな鳥小屋があった。二十羽が飼われていた。
「おい、紋次郎、あんまりニワトリに近づくなよ。怖がって逃げるから。」
「はい、分かりました。」
紋次郎は、熊さんと、新しい鳥小屋を作っていた。
「このニワトリは食べるんですか?」
「このニワトリは食べないよ。卵を産むニワトリなんだよ。」
「どこが違うんですか?」
「このニワトリはレイヤーと言って、種類が違うんだよ。」
「そうなんですか。」
「食べるのは、太ったブロイダーという種類のやつ。」
「そうなんですか。」
「紋次郎、そこの出っ張ってるところを、鋸で切ってくれ。」
「はい。」
紋次郎は、ぎこちなかった。鋸がときどき止まっていた。
「おまえ、下手くそだなあ〜。引くときに力を入れるんだよ。押すときには力を入れないの。」
「はい。」
「俺がやる。よ〜く観とけ。」
「はい。」
熊さんの仕事は、手早く丁寧だった。
「こうだ。分かったか?」
「はい。さすがに大工さんですねえ。」
「こんなのは、遊びだよ。」
霧のなかから、真由美がやって来るのが見えた。
「熊さ〜〜ん、おはよう〜!」
「おっ、真由美ちゃんだ!おはよっ!」
紋次郎も挨拶した。
「真由美ちゃん、おはよう!」
「紋ちゃん、おはよう!何してるの?今日は掃除には行かないの?」
「今日は、熊さんの手伝いだよ。鳥小屋を作ってるの。」
「ニワトリのお家作ってるの?」
「そうだよ。」
熊さんは、作業を中断した。
「あっ、そうだ。卵をあげる、真由美ちゃん!」
真由美は手を上げた。
「熊さん、トマトと交換してください!」
「ああ、いいよ。」


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