ショーケンとアキラは「仕事があるから。」と言って去って行った。 真由美は、ポンポコリンに質問した。 「三人は、どこに行くの?」 「病院に行くのよ。忍さんが怪我をしたの。」 「どうして怪我をしたの?」 「五郎と相撲をして怪我をしたの。」 「熊の五郎と相撲をしたの〜?」 「そうなの。馬鹿みたいでしょう。」 忍は黙っては聞いてはいなかった。 「馬鹿とは何だよ〜。仕方が無かったんだよ〜。」 ポンポコリンは、忍に謝った。 「ごめんごめん!」 唐突に正男が真由美に挨拶した。 「真由美ちゃん、おはよう!」 大きな声だった。 「おはよう、まさおくん!」 「何してるの〜?」 「トマトを売ってるの。」 「ふ〜〜〜ん。」 ポンポコリンが思い出したように言った。 「あっ、そうだ。熊さんが、卵が余ってるから、後で持って行くって言ってたわ。」 「わ〜、そうですか。じゃあこれから取りに行きます。」 「鳥小屋にいるわよ。」 「はい。」 真由美は、人間村の鳥小屋に向かって歩き出した。ポンポコリンたちは、病院に向かって走り出した。正男が叫んでいた。 「まゆみちゃ〜〜ん、またね〜!」 真由美も後ろを向いて「またね〜〜!」と言った。お互い、霧で見えなくなっていた。神の意思という大きな力で、幼い二人は無意識に共鳴しあっていた。
人間村の熊さんのドームハウスの裏には、大きな鳥小屋があった。二十羽が飼われていた。 「おい、紋次郎、あんまりニワトリに近づくなよ。怖がって逃げるから。」 「はい、分かりました。」 紋次郎は、熊さんと、新しい鳥小屋を作っていた。 「このニワトリは食べるんですか?」 「このニワトリは食べないよ。卵を産むニワトリなんだよ。」 「どこが違うんですか?」 「このニワトリはレイヤーと言って、種類が違うんだよ。」 「そうなんですか。」 「食べるのは、太ったブロイダーという種類のやつ。」 「そうなんですか。」 「紋次郎、そこの出っ張ってるところを、鋸で切ってくれ。」 「はい。」 紋次郎は、ぎこちなかった。鋸がときどき止まっていた。 「おまえ、下手くそだなあ〜。引くときに力を入れるんだよ。押すときには力を入れないの。」 「はい。」 「俺がやる。よ〜く観とけ。」 「はい。」 熊さんの仕事は、手早く丁寧だった。 「こうだ。分かったか?」 「はい。さすがに大工さんですねえ。」 「こんなのは、遊びだよ。」 霧のなかから、真由美がやって来るのが見えた。 「熊さ〜〜ん、おはよう〜!」 「おっ、真由美ちゃんだ!おはよっ!」 紋次郎も挨拶した。 「真由美ちゃん、おはよう!」 「紋ちゃん、おはよう!何してるの?今日は掃除には行かないの?」 「今日は、熊さんの手伝いだよ。鳥小屋を作ってるの。」 「ニワトリのお家作ってるの?」 「そうだよ。」 熊さんは、作業を中断した。 「あっ、そうだ。卵をあげる、真由美ちゃん!」 真由美は手を上げた。 「熊さん、トマトと交換してください!」 「ああ、いいよ。」
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