真由美が、リアカーを引いて歩いていると、赤いオープンカーが止まった。 「お嬢ちゃん、ちょっと聞きたいんだけど。」 サングラスをかけた、やくざ風の男だった。にやっと笑っていた。 「なんでしょうか?」 「このへんに、太った人間の田んぼを知らない?」 「田んぼですか?」 「この太った女を、田んぼに捨てようと思ってねえ。」 男の隣には、とっても太った女が座っていた。 「田んぼに捨てる?女の人をですか?」 「田んぼに埋めたら肥料になるでしょう。」 「え〜〜〜〜〜!?」 真由美は、びっくりした。 「そんなの知りません!」 真由美は、急いで歩き出した。オープンカーは通り過ぎて行った。 「たいへんだ、たいへんだ、おまわりさんに言わなきゃ!」 真由美が、急いで警察に向かっていると、霧の中からショーケンとアキラが現れた。 ショーケンが気付いた。 「真由美ちゃん、どうしたの?そんなに急いで?」 真由美は止まった。 「あっ、ショーケンさん!たいへん、たいへん!」 「どうしたの!?」 「人殺しが出たの!」 「人殺し?」 「太った女の人が、田んぼに捨てられて埋められるの!」 「えっ?」 アキラもびっくりして尋ねた。 「どこで?」 「田んぼに行っちゃったの!」 「えっ?」 スライダーカートが、やって来るのが見えた。 「真由美ちゃ〜〜〜ん!」 スライダーカートに乗っているのは、ポンポコリンと忍と正男だった。 声を掛けたのは、運転席でハンドルを握っているポンポコリンだった。 「どうしたの?」 「人殺しが出たの。」 「人殺し?どこで?」 真由美は、泣きそうな顔になっていた。 「早くしないと、田んぼに埋められちゃうわ!」 「田んぼに埋められる?」 「クルマに乗った男の人が、女の太った人を、田んぼに埋めるって言っていたの。サングラスをかけた怖い人だったわ。」 「真由美ちゃんに言ったの?」 「そう。」 アキラが、「それ、冗談だよ、真由美ちゃん。」と脇から言った。 「違うわ、女の人悲しい顔をしてたわ。」 ポンポコリンが気付いた。 「あ〜〜、分かった!それ、きっと、高野山お経ダイエット村のことだわ。」 ショーケンが尋ねた。 「何、それ?」 「精進料理と高原の風と針葉樹の香りと、お経と適度な農作業で、ダイエットをする村です。」 「へ〜〜え、お経でダイエットできるの?」 「太る原因は、心にあるとされています。お経で貪欲を打ち消すそうです。」 「へ〜〜え、そうなの。大したもんだなあ。」 ショーケンは、高野山のしたたかさに感心していた。 「高野山は、色んなことをやってるんだねえ。」 真由美が、ポンポコリンに尋ねた。 「じゃあ、あの人たちは、そこに行ったの?」 「きっとそうよ。」 「どうして分かるの?」 「悪いことするの人が、真由美ちゃんに言うわけないでしょう。」 「えっ?」 「泥棒する前に、泥棒しますって言う人はいないわ。」 「あっ、そうか。」 真由美は安心した。
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