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作品名:高野山 人間村 作者:毬藻

第79回   太った女は田んぼに捨てる
真由美が、リアカーを引いて歩いていると、赤いオープンカーが止まった。
「お嬢ちゃん、ちょっと聞きたいんだけど。」
サングラスをかけた、やくざ風の男だった。にやっと笑っていた。
「なんでしょうか?」
「このへんに、太った人間の田んぼを知らない?」
「田んぼですか?」
「この太った女を、田んぼに捨てようと思ってねえ。」
男の隣には、とっても太った女が座っていた。
「田んぼに捨てる?女の人をですか?」
「田んぼに埋めたら肥料になるでしょう。」
「え〜〜〜〜〜!?」
真由美は、びっくりした。
「そんなの知りません!」
真由美は、急いで歩き出した。オープンカーは通り過ぎて行った。
「たいへんだ、たいへんだ、おまわりさんに言わなきゃ!」
真由美が、急いで警察に向かっていると、霧の中からショーケンとアキラが現れた。
ショーケンが気付いた。
「真由美ちゃん、どうしたの?そんなに急いで?」
真由美は止まった。
「あっ、ショーケンさん!たいへん、たいへん!」
「どうしたの!?」
「人殺しが出たの!」
「人殺し?」
「太った女の人が、田んぼに捨てられて埋められるの!」
「えっ?」
アキラもびっくりして尋ねた。
「どこで?」
「田んぼに行っちゃったの!」
「えっ?」
スライダーカートが、やって来るのが見えた。
「真由美ちゃ〜〜〜ん!」
スライダーカートに乗っているのは、ポンポコリンと忍と正男だった。
声を掛けたのは、運転席でハンドルを握っているポンポコリンだった。
「どうしたの?」
「人殺しが出たの。」
「人殺し?どこで?」
真由美は、泣きそうな顔になっていた。
「早くしないと、田んぼに埋められちゃうわ!」
「田んぼに埋められる?」
「クルマに乗った男の人が、女の太った人を、田んぼに埋めるって言っていたの。サングラスをかけた怖い人だったわ。」
「真由美ちゃんに言ったの?」
「そう。」
アキラが、「それ、冗談だよ、真由美ちゃん。」と脇から言った。
「違うわ、女の人悲しい顔をしてたわ。」
ポンポコリンが気付いた。
「あ〜〜、分かった!それ、きっと、高野山お経ダイエット村のことだわ。」
ショーケンが尋ねた。
「何、それ?」
「精進料理と高原の風と針葉樹の香りと、お経と適度な農作業で、ダイエットをする村です。」
「へ〜〜え、お経でダイエットできるの?」
「太る原因は、心にあるとされています。お経で貪欲を打ち消すそうです。」
「へ〜〜え、そうなの。大したもんだなあ。」
ショーケンは、高野山のしたたかさに感心していた。
「高野山は、色んなことをやってるんだねえ。」
真由美が、ポンポコリンに尋ねた。
「じゃあ、あの人たちは、そこに行ったの?」
「きっとそうよ。」
「どうして分かるの?」
「悪いことするの人が、真由美ちゃんに言うわけないでしょう。」
「えっ?」
「泥棒する前に、泥棒しますって言う人はいないわ。」
「あっ、そうか。」
真由美は安心した。



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