人間村の集会所には、村民が集まっていた。龍次が朝の簡単な挨拶を終えると、みんなはそれぞれの職場に向かって行った。 「じゃあ、わたしたちも行きましょう。」 「はい。」 「じゃあ、ポンポコリン、正男くん頼むよ。」 「はい。」 「正男、母ちゃん、仕事に行って来るからね。おとなしく、お姉ちゃんと待っているんだよ。」 「うん、分かった!」 正男は、少し寂しそうな顔をしていた。 「ぼく、男だから大丈夫だよ!」 「じゃあ、行って来るからね。」 母親の礼子は、龍次と一緒に歩き出した。礼子が振り向くと、正男が手を振っていた。 「母ちゃん、がんばってね〜!」 礼子と龍次は、霧の中に消えて行った。 ポンポコリンが、正男の手を取った。 「さあ、行きましょう。」 「どこに行くの?」 「集会所の中よ。」 集会所の中に入ると、忍がいた。 「忍さん、大丈夫?」 「なんとか歩けるようになったよ。まだ痛いけど。」 「無理しないほうがいいわ。捻挫は安静が大切なの。」 「分かった。」 忍は、正男に目が行った。 「その子、だあれ?」 「正男くん。新しく入った、五十嵐正男くん。」 「子供が一人で?」 「ううん、お母さんと一緒よ。」 忍は、びっこを引きながら、正男に近づいてきた。 「正男くん、おはよう!」 正男は頭を下げた。 「おはようございます!」 「お〜〜、元気いいねえ〜。いくつ?」 「五歳です!」 「五歳かあ、若いなあ〜。」 ポンポコリンが笑った。 「正男くん、この人、忍お兄さん。歌と踊りが上手くて、スケボーと自転車が上手いの。」 「しのぶおにいさん…」 忍は、得意のブレイクダンスをやろうとした。 「あたたた、駄目だ!」 「無理よ。悪くするからやめたほがいいわ。」 「あ〜〜、まだ駄目だなあ〜。」 正男は、忍の左足を見ていた。 「足が痛いの?」 「足を怪我してるのよ。」 「今日一日駄目だなあ、こりゃあ…」 「病院に行って診てもらったほうが、やっぱりいいわ。」 「そうかなあ?」 「歩けないんでしょう?」 「ああ…」 「スライダーカートに乗って行けばいいわ。」 「そうするかな。」 「じゃあ、ちょっとここで待ってて、わたしが持ってくるわ。」 ポンポコリンは、出て行くと、すぐに戻って来た。 「わたしが運転して行くわ。」 「この子、どうするの?」 「そうね、一緒に行きましょう。忍さんの上に載せれば大丈夫でしょう。」 「ああ、大丈夫だよ。」 三人は、スライダーカートに乗って、霧の中を走り出した。正男は、喜んでいた。 「わ〜〜〜、おもしろいなあ〜〜!」
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