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作品名:高野山 人間村 作者:毬藻

第78回   五十嵐正男
人間村の集会所には、村民が集まっていた。龍次が朝の簡単な挨拶を終えると、みんなはそれぞれの職場に向かって行った。
「じゃあ、わたしたちも行きましょう。」
「はい。」
「じゃあ、ポンポコリン、正男くん頼むよ。」
「はい。」
「正男、母ちゃん、仕事に行って来るからね。おとなしく、お姉ちゃんと待っているんだよ。」
「うん、分かった!」
正男は、少し寂しそうな顔をしていた。
「ぼく、男だから大丈夫だよ!」
「じゃあ、行って来るからね。」
母親の礼子は、龍次と一緒に歩き出した。礼子が振り向くと、正男が手を振っていた。
「母ちゃん、がんばってね〜!」
礼子と龍次は、霧の中に消えて行った。
ポンポコリンが、正男の手を取った。
「さあ、行きましょう。」
「どこに行くの?」
「集会所の中よ。」
集会所の中に入ると、忍がいた。
「忍さん、大丈夫?」
「なんとか歩けるようになったよ。まだ痛いけど。」
「無理しないほうがいいわ。捻挫は安静が大切なの。」
「分かった。」
忍は、正男に目が行った。
「その子、だあれ?」
「正男くん。新しく入った、五十嵐正男くん。」
「子供が一人で?」
「ううん、お母さんと一緒よ。」
忍は、びっこを引きながら、正男に近づいてきた。
「正男くん、おはよう!」
正男は頭を下げた。
「おはようございます!」
「お〜〜、元気いいねえ〜。いくつ?」
「五歳です!」
「五歳かあ、若いなあ〜。」
ポンポコリンが笑った。
「正男くん、この人、忍お兄さん。歌と踊りが上手くて、スケボーと自転車が上手いの。」
「しのぶおにいさん…」
忍は、得意のブレイクダンスをやろうとした。
「あたたた、駄目だ!」
「無理よ。悪くするからやめたほがいいわ。」
「あ〜〜、まだ駄目だなあ〜。」
正男は、忍の左足を見ていた。
「足が痛いの?」
「足を怪我してるのよ。」
「今日一日駄目だなあ、こりゃあ…」
「病院に行って診てもらったほうが、やっぱりいいわ。」
「そうかなあ?」
「歩けないんでしょう?」
「ああ…」
「スライダーカートに乗って行けばいいわ。」
「そうするかな。」
「じゃあ、ちょっとここで待ってて、わたしが持ってくるわ。」
ポンポコリンは、出て行くと、すぐに戻って来た。
「わたしが運転して行くわ。」
「この子、どうするの?」
「そうね、一緒に行きましょう。忍さんの上に載せれば大丈夫でしょう。」
「ああ、大丈夫だよ。」
三人は、スライダーカートに乗って、霧の中を走り出した。正男は、喜んでいた。
「わ〜〜〜、おもしろいなあ〜〜!」



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