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作品名:高野山 人間村 作者:毬藻

第76回   お〜い、おいおい!
ふてくされてる福之助の肩を、姉さんがポンと叩いた。
「昨夜は、ご苦労さん!」
「眠れましたか?」
「よ〜〜く眠れたよ。」
「それは良かったですねえ。」
「もう休んでいいよ。ありがとう!」
「じゃあ、休みます。あ〜〜、もう少しで空っぽだった。良かった!」
福之助のバッテリーはエンプティ寸前だった。福之助は、充電器の置いてある場所に行こうとした。
「あっ、ちょっと待って!」
福之助は振り向いた。
「何ですか?」
姉さんは、浴場に行くと、水で濡らし絞ったタオルを持って戻ってきた。
「背中、汚れてるよ。」
姉さんは、福之助の背中を、タオルで拭き始めた。福之輔は、黙っていた。
「はい、いいよ!」
福の助は突然泣き出した。
「お〜い、おいおい!」
「どうしたんだい?」
「泣いてるんです。」
「泣いてる?」
「姉さんの、突然変異の優しさに、泣いているんです。」
「オーバーなやつだなあ?」
「お〜い、おいおい!」
「変な泣き声だなあ。歌舞伎役者か?」
福之助は泣き止んだ。
「あらあら、汚い手で顔をこするから、顔が汚れてるじゃないか。」
姉さんは、福之助の顔を拭き始めた。福之助は、また泣き出した。
「お〜い、おいおい!」
「なんだか、安物の感情プログラムだなあ。」
福之助は泣き止んだ。
「なんですって!?」
「いいから早く寝ろ。」
「はい。」
福之助は、充電器のある場所に行くと、壁を背にして座り、足を伸ばすと、充電器の端子を胸に差し込んだ。
「おやすみなさい。」
「おやすみ。」
福之助は目を閉じ動かなくなった。姉さんは壁時計を見た。
「八時五分か…」
アニーは、食後の後片付けをしていた。
「葛城さん、今日は、午前中は人間村研究所に行きます。」
「人間村研究所?どこにあるんですか?」
「鶴姫公園のアルパカ牧場の隣にあります。」
「えっ、アルパカ牧場?」
「アルパカって、ご存知ですか?」
「知ってます、知ってます。首の長い可愛い動物でしょう?」
「そうです。」
「触れるんですか?」
「触れるって聞いてます。」
「わ〜〜〜!一度触ってみたいと思っていたんです。」
アルパカを触れると聞いて、姉さんの心は子供のようにはしゃいでいた。
「望遠鏡カメラを持っていきましょう。」
「はいはい、はいはい!」


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