ふてくされてる福之助の肩を、姉さんがポンと叩いた。 「昨夜は、ご苦労さん!」 「眠れましたか?」 「よ〜〜く眠れたよ。」 「それは良かったですねえ。」 「もう休んでいいよ。ありがとう!」 「じゃあ、休みます。あ〜〜、もう少しで空っぽだった。良かった!」 福之助のバッテリーはエンプティ寸前だった。福之助は、充電器の置いてある場所に行こうとした。 「あっ、ちょっと待って!」 福之助は振り向いた。 「何ですか?」 姉さんは、浴場に行くと、水で濡らし絞ったタオルを持って戻ってきた。 「背中、汚れてるよ。」 姉さんは、福之助の背中を、タオルで拭き始めた。福之輔は、黙っていた。 「はい、いいよ!」 福の助は突然泣き出した。 「お〜い、おいおい!」 「どうしたんだい?」 「泣いてるんです。」 「泣いてる?」 「姉さんの、突然変異の優しさに、泣いているんです。」 「オーバーなやつだなあ?」 「お〜い、おいおい!」 「変な泣き声だなあ。歌舞伎役者か?」 福之助は泣き止んだ。 「あらあら、汚い手で顔をこするから、顔が汚れてるじゃないか。」 姉さんは、福之助の顔を拭き始めた。福之助は、また泣き出した。 「お〜い、おいおい!」 「なんだか、安物の感情プログラムだなあ。」 福之助は泣き止んだ。 「なんですって!?」 「いいから早く寝ろ。」 「はい。」 福之助は、充電器のある場所に行くと、壁を背にして座り、足を伸ばすと、充電器の端子を胸に差し込んだ。 「おやすみなさい。」 「おやすみ。」 福之助は目を閉じ動かなくなった。姉さんは壁時計を見た。 「八時五分か…」 アニーは、食後の後片付けをしていた。 「葛城さん、今日は、午前中は人間村研究所に行きます。」 「人間村研究所?どこにあるんですか?」 「鶴姫公園のアルパカ牧場の隣にあります。」 「えっ、アルパカ牧場?」 「アルパカって、ご存知ですか?」 「知ってます、知ってます。首の長い可愛い動物でしょう?」 「そうです。」 「触れるんですか?」 「触れるって聞いてます。」 「わ〜〜〜!一度触ってみたいと思っていたんです。」 アルパカを触れると聞いて、姉さんの心は子供のようにはしゃいでいた。 「望遠鏡カメラを持っていきましょう。」 「はいはい、はいはい!」
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