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作品名:高野山 人間村 作者:毬藻

第71回   肝変え参り
一の橋のバス停で、高校生くらいの三人の少女達が、木のベンチに座っていた。一人の少女が、歩いてくる熊さんを呼び止めた。
「すみません!」
日頃、ギャルに呼び止められることのない熊さんは、喜んで止まった。
「なんだい?」
「人間村って、こっちの方向ですか?」
少女は指差した。
「そうだよ。」
「遠いんですか?」
「そんなに遠くないよ、歩いて十分くらいかな。」
「ありがとうございます。」
「なんだ、それだけ?」
「おみやげとか売ってます?」
「おみやげ?人間村の?」
「はい。」
「そんなのは売ってないよ。」
少女は、携帯電話を取り出して見せた。
「これを探しているんですけど、知りませんか?」
携帯電話についているストラップを見せた。
「降魔(ごうま)の利剣のストラップなんですけど。」
「ごうまのりけん?」
「これは、インターネットで買ったんですけど、やっぱり本物は高野山(こうやさん)だと思って、ここに来たんです。」
「で、無かったわけね?」
「はい。」
「どこかで売ってると思うよ。でも、おみやげ屋さんは、だいたい八時には閉まるからなあ〜。」
「そうなんですか。八時か〜、ちょうど来た頃です。」
「君達、どこから来たの?」
「橋本から来ました。」
「わざわざ、それを買いに?」
「はい。それと、奥の院の肝変え参りに。」
「きもがえまいり?」
「えっ、知らないんですか?」
「何、それ?」
「武将たちの墓のなかを夜中に歩いて、自分の肝を変えるんです。」
「肝を変える?」
「弱い肝を、次元の高い強い肝に変えてもらうんです。」
「へ〜〜え、初めて聞いたなあ〜。それ、流行ってるの?」
「はい。」
「だから最近、夜に人が多くなったのかあ。」


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