一の橋のバス停で、高校生くらいの三人の少女達が、木のベンチに座っていた。一人の少女が、歩いてくる熊さんを呼び止めた。 「すみません!」 日頃、ギャルに呼び止められることのない熊さんは、喜んで止まった。 「なんだい?」 「人間村って、こっちの方向ですか?」 少女は指差した。 「そうだよ。」 「遠いんですか?」 「そんなに遠くないよ、歩いて十分くらいかな。」 「ありがとうございます。」 「なんだ、それだけ?」 「おみやげとか売ってます?」 「おみやげ?人間村の?」 「はい。」 「そんなのは売ってないよ。」 少女は、携帯電話を取り出して見せた。 「これを探しているんですけど、知りませんか?」 携帯電話についているストラップを見せた。 「降魔(ごうま)の利剣のストラップなんですけど。」 「ごうまのりけん?」 「これは、インターネットで買ったんですけど、やっぱり本物は高野山(こうやさん)だと思って、ここに来たんです。」 「で、無かったわけね?」 「はい。」 「どこかで売ってると思うよ。でも、おみやげ屋さんは、だいたい八時には閉まるからなあ〜。」 「そうなんですか。八時か〜、ちょうど来た頃です。」 「君達、どこから来たの?」 「橋本から来ました。」 「わざわざ、それを買いに?」 「はい。それと、奥の院の肝変え参りに。」 「きもがえまいり?」 「えっ、知らないんですか?」 「何、それ?」 「武将たちの墓のなかを夜中に歩いて、自分の肝を変えるんです。」 「肝を変える?」 「弱い肝を、次元の高い強い肝に変えてもらうんです。」 「へ〜〜え、初めて聞いたなあ〜。それ、流行ってるの?」 「はい。」 「だから最近、夜に人が多くなったのかあ。」
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