ポンポコリンは、ワープロのチャット機能を使って、電磁波を介して、紋次郎とチャットをしていた。 突然、どっかんと凄い音がした。建物が揺れた。ポンポコリンは立ち上がった。 「何、今の!?」 紋次郎は、手話で答えた。カミナリです。 「カミナリ…」 正男の声が聞こえた。 「母ちゃん!」 「何かあったのかしら?」 ポンポコリンは、部屋を出て、隣の部屋の引き戸を開けた。 「どうしたの、正男くん?」 正男は、母親の礼子を起こそうとしていた。 「母ちゃん!」 ポンポコリンは急いで、礼子の元に歩み寄った。 「礼子さん!」 礼子は起きなかった。 「礼子さん!」 礼子は、ゆっくりと目を開けた。 「どうしたんですか?」 「だいじょうぶですか?」 「はい。だいじょうぶです。」 正男は泣きそうな顔になっていた。 「母ちゃん、怖いよ〜。」 「どうしたの、正男?」 「何かが落っこちたんだよ〜!」 「何かって?」 ポンポコリンが説明した。 「今、近くにカミナリが落ちたみたいなんです。」 「え〜〜、そうなんですか!?」 ポンポコリンは呆れて笑い顔で尋ねた。 「知らなかったんですか?」 「はい。」 「じゃあ、よほどぐっすりと寝てらしたんですねえ。」 「はい、今日は疲れてしまって。」 「なあんだ、そうでしたか。」 「母ちゃん、聞こえなかったの〜?」 「ごめんね、正男。」 ポンポコリンは安心した。 「正男くん、大丈夫よ。ここには、カミナリは落ちないから。」 「ほんと?」 「ほんとよ。」 「どうして落ちないの?」 「避雷針っていうのがあるの。ここに落ちないで、そこに落ちるの。」 「どんなの?」 「見たい?」 「うん。」 「じゃあ、見せてあげるから、お姉さんについてらっしゃい。」 「うん。」 ポンポコリンは、正男と一緒に、ドームハウスの外に出た。そして、近くに建ってる避雷針を指差そうとした。天軸山の頂の不動明王が、剣を光らせ燃えていた。 「お姉ちゃん、なあにあれ!?」 彼女は、不動明王の剣が、避雷針であることを知っていた。 「あそこに落ちたんだわ。」 「あれがそうなの?」 「そうよ。お不動さんって言うの。」 「おふどうさん。カミナリは、あそこに落ちたの?」 「あそこに落ちたのよ。カミナリは、お不動さんに落ちて、ここには落ちないの。」 「じゃあ、おふどうさんが、守っているんだね。」 「そうよ、ここにカミナリが落ちないように守っているの。」 正男は、不動明王を不思議なものを見るように、目を凝らして見ていた。 「あんなに燃えてて、だいじょうぶなの?火事にはならないの?」 「大丈夫よ、あれは本物の火じゃなくって、電気だから、火事にはならないの。」 「でんきは、火事にならないの?」 「そうよ。」 「ふ〜〜ん。」 「さあ、お不動さんに、手を合わせましょう。」 彼女は、手を合わせて礼を言った。 「お不動さん、どうもありがとう!」 正男も、真似をして礼を言った。 「おふどうさん、どうもありがとう!」 風はあったが、雨は降っていなかった。彼女は、空を見回した。 「変ねえ、ちっとも雲なんかないのに?」 「どうしたの、お姉さん?」 「なんでもない、さあ帰ろう。」 「うん。」 二人は、ドームハウスに戻って行った。
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