「あ〜〜、頭使ったら、甘いものが欲しくなってきたよ。」 「頭使ったって?」 「発明だよ、発明。偉大なる発明!」 「なあんだ、まだやってたの?しつこいねえ。」 「おまえは、直ぐに諦めるからなあ〜。猿と同じだなあ。」 「猿は無いっしょ!」 「猿と同じだよ。ただ生きてるのは。猿や動物と同じ!俺、気が付いたんだよ。」 「何を?」 「人間と動物の違いだよ。」 「そうなの?」 「どこだと思う?」 「そうだねえ、やっはり、物を作って使うことかな?」 「そうだろう。それが人間なんだよ。ただ生きてるだけじゃあ、動物なんだよ。」 「まあね。」 「おまえも何か考えろ。」 「じゃあ、考えるよ。」 「そうやって、素直なところが、AB型だな。」 「まあね。難しいことは、あんまり深く考えないんだよ、疲れるから。」 「それで、よく将棋ができんな?」 「その頭とは違うんじゃないの。」 「簡単なものでもいいから考えろ。」 「どんなの?」 「…犬の自転車とか。」 「犬の自転車?」 「最近は、太って歩けない犬が多いだろう。」 「そうなの?」 「おまえ、知らないの?」 「へ〜〜え?あ〜〜あ、俺話しを聞くだけで疲れちゃった。」 「実はな、俺もそうなんだよ。」 「だったら、考えなきゃあいいじゃん。」 「そうだな。」 「無理すると、頭に悪いよ。」 「そうだな。」 「猿でいいじゃん、幸せなら。」 「そうだな。さすが、中卒のインテリ!」 「兄貴、それ褒めてんの?」 「褒めてんだよ、感心してんだよ。甘いものないかな〜。」 「甘いものはないけど、甘辛いものだったら、あるよ。」 「甘辛い?なんだい、そりゃあ?」 「わさび大福。」 「わさび大福?」 「なんか珍しいから、買ってきちゃった。近くの何とか村の名物って書いてあったよ。」 「野迫川(のせがわ)村だよ。」 「よく知ってるじゃん?」 「今日、行ってきたとこだよ。」 「ああ、そうなんだ。へ〜〜〜え。」 「どこにあるんだよ、それ?その甘辛いっていう大福。」 「冷蔵庫。」 「それ、一つくれよ。」 「ああ、いいよ。」 突然、ドッカ〜ンと爆裂音が轟いた。ショーケンはびっくりした。 「なんだ、なんだ!?」 アキラも立ち上がって驚いた。 「あ〜〜、びっくり!」 「猿狩り小次郎のミサイルか?」 「まさか?」 二人は、ドームハウスの外に出た。 天軸山の頂上で、不動明王の剣がネオンのように光って燃えていた。 「兄貴、なんだ、ありゃあ!?」 「なんだい、ありゃあ?」 二人は、呆然として、固まって見ていた。 「兄貴、カミナリでも落ちたんじゃないの?」 「そうかも知れないなあ。」 「でもおかしいなあ、こんなに晴れてるのに?」 「そうだなあ…」 「不気味だねえ。」 「そうだなあ…」 「高野山って、変なことばっかり起きるね。」 「そうだなあ…」 「あの剣を持ってるのに、命中したんじゃないの?」 「…サンダーストラックだなあ。」 「何それ?」 「AC/DCだよ。落雷命中!」 「何それ?」 「オーストラリアのカリスマ・ヘビメタだよ。」 「ヘビメタ・バンドか。兄貴はやっぱ、音楽には詳しいなあ。」 「本物のショーケンほどじゃないけどな。」
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