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作品名:高野山 人間村 作者:毬藻

第66回   UFOサンダー
きょん姉さんが寝てると、突然、けたたましい雷鳴がログハウスの窓ガラスを、ガタガタと揺り動かした。姉さんは、びっくりして起き上がった。
「なんだ、なんだ!?」
アニーも起き上がった。
「カミナリだわ。」
姉さんは、福之助を探した。どこにもいなかった。
「福之助!」
「姉さん、ここ!」
福之助は、テーブルの下にもぐって、亀のように丸まっていた。
「桑原、くわばら…」
姉さんは、ベッドから立ち上がり、窓のカーテンを開けた。
「おかしいわねえ、こんなに晴れてるのに…」
夜空には、色とりどりの星がきらめいていた。姉さんは、反対側の窓のカーテンも開けた。
「こっちも、雷雲なんかないわ。」
神鳴りは、それっきりだった。
「おかしいわね〜、遠くのほうも光ってないし…」
福之助が、テーブルの下から、恐る恐る出てきた。
「もう大丈夫ですか?」
「たぶんな。」
「たぶん…」
「大丈夫だよ。」
「あ〜〜、びっくりした。AC/DCの、サンダーストラックみたいだったですねえ。」
「そうだなあ。」
アニーも起きてきた。姉さんが開けたカーテンの外を眺めた。
「そうですねえ、天気はいいですねえ…」
福之助が、不気味な声で答えた。
「ひょっとしたら、霊界のカミナリかもしれません。」
姉さんが叱咤した。
「そんなのあるか、アホ!」
「あ〜〜、また言った、アホって!」
アニーは、反対側の窓も見ていた。
「今のは、ひょっとすると…、UFOサンダーだったのかも知れません。」
姉さんの知らない言葉だった。
「UFOサンダー?」
「UFOが、時空間をワープするときにみられる現象です。」
「カミナリがですか?」
「はい。強いエネルギーによって異常な静電気が発生して、それでカミナリが落ちるんだそうです。」
「UFOのワープによるカミナリ?」
「UFO研究家が言ってました。」
「日本人の方ですか?」
「はい、有名な弥生(やよい)さんという方です。」
「あ〜〜、あの方か。」
「ここは、よくUFOが目撃されているんですよ。」
「え〜〜〜、そうなんですか?」
「わたしも、小さいときに見たことがあります。」
「え〜〜〜?」
「どのような?」
「でもあれは、高野山を護っている龍の玉だったのかも知れません。」
「龍の玉…、緑色だったんですか?」
「はい、空を飛び跳ねていました。」
「飛び跳ねて?ウサギのようにですか?」
「はい。」
「……」
「プラズマ現象とは、違っていたような気がします。」
「アニーさんだけが見てたんですか?」
「いいえ、わたしの両親も見ていました。」
「じゃあ、本当に飛んでいたんでしょうねえ。」
「たぶん……」
福之助が、ゆっくりと遠慮するように、二人に近づいてきた。
「たぶん…、パハップス…メイビイ…」
「おまえ、何に言ってるるんだよう?」
「何でもありません!」
福之助は、腕を組み考え込んでいた。



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