きょん姉さんが寝てると、突然、けたたましい雷鳴がログハウスの窓ガラスを、ガタガタと揺り動かした。姉さんは、びっくりして起き上がった。 「なんだ、なんだ!?」 アニーも起き上がった。 「カミナリだわ。」 姉さんは、福之助を探した。どこにもいなかった。 「福之助!」 「姉さん、ここ!」 福之助は、テーブルの下にもぐって、亀のように丸まっていた。 「桑原、くわばら…」 姉さんは、ベッドから立ち上がり、窓のカーテンを開けた。 「おかしいわねえ、こんなに晴れてるのに…」 夜空には、色とりどりの星がきらめいていた。姉さんは、反対側の窓のカーテンも開けた。 「こっちも、雷雲なんかないわ。」 神鳴りは、それっきりだった。 「おかしいわね〜、遠くのほうも光ってないし…」 福之助が、テーブルの下から、恐る恐る出てきた。 「もう大丈夫ですか?」 「たぶんな。」 「たぶん…」 「大丈夫だよ。」 「あ〜〜、びっくりした。AC/DCの、サンダーストラックみたいだったですねえ。」 「そうだなあ。」 アニーも起きてきた。姉さんが開けたカーテンの外を眺めた。 「そうですねえ、天気はいいですねえ…」 福之助が、不気味な声で答えた。 「ひょっとしたら、霊界のカミナリかもしれません。」 姉さんが叱咤した。 「そんなのあるか、アホ!」 「あ〜〜、また言った、アホって!」 アニーは、反対側の窓も見ていた。 「今のは、ひょっとすると…、UFOサンダーだったのかも知れません。」 姉さんの知らない言葉だった。 「UFOサンダー?」 「UFOが、時空間をワープするときにみられる現象です。」 「カミナリがですか?」 「はい。強いエネルギーによって異常な静電気が発生して、それでカミナリが落ちるんだそうです。」 「UFOのワープによるカミナリ?」 「UFO研究家が言ってました。」 「日本人の方ですか?」 「はい、有名な弥生(やよい)さんという方です。」 「あ〜〜、あの方か。」 「ここは、よくUFOが目撃されているんですよ。」 「え〜〜〜、そうなんですか?」 「わたしも、小さいときに見たことがあります。」 「え〜〜〜?」 「どのような?」 「でもあれは、高野山を護っている龍の玉だったのかも知れません。」 「龍の玉…、緑色だったんですか?」 「はい、空を飛び跳ねていました。」 「飛び跳ねて?ウサギのようにですか?」 「はい。」 「……」 「プラズマ現象とは、違っていたような気がします。」 「アニーさんだけが見てたんですか?」 「いいえ、わたしの両親も見ていました。」 「じゃあ、本当に飛んでいたんでしょうねえ。」 「たぶん……」 福之助が、ゆっくりと遠慮するように、二人に近づいてきた。 「たぶん…、パハップス…メイビイ…」 「おまえ、何に言ってるるんだよう?」 「何でもありません!」 福之助は、腕を組み考え込んでいた。
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