「あ〜〜、もう十時過ぎたよ!寝ないと明日は来ないから、寝るぞ!」 「寝なくても、時間が来れば、明日は来ますよ。」 「人間は、寝て死んで、起きて生まれ変わって、明日になるの。」 「変わった考えだなあ〜。」 「じゃあ、おまえはロボットだから、起きとけ。」 「え〜〜〜〜!?」 「ロボットは、三時間で充電完了だろう。」 姉さんは、用心深く、窓のカーテンを開けてみた。 「あんだ、ありゃあ〜!?」 アニーは、トイレから出てきたところだった。 「何ですか?」 「聖火ランナーが走ってます。」 「えっ?」 アニーも覗いた。福之助も、アニーの後ろから覗いた。 「オリンピックですか?」 「なんで、こんなところで、今頃にオリンピックをやんだよ?」 「そうですね、変ですね。…分かった!幽霊のオリンピックだ!」 「アホ!」 「ちょおっと福ちゃん、わたしの肩に顎を乗せないでよ。」 「すいません、アニーさん!」 「おまえって、相変わらず、アホでドジだねえ〜。」 「アホでドジとは何ですか、失礼な!」 「あれは、迦楼羅焔(カルラえん)ランナーです。」 「かるらえんランナー?」 「迦楼羅(カルラ)は、毒を炎で焼き尽くし食べるという伝説上の鳥の名です。」 「あの人、忍者の格好をしてましたけど?」 「忍者隊月光です。」 「あれが、有名な忍者隊月光ですか…」 「天軸山の頂上に、不動明王が建っています。日曜の夜、十時になると、迦楼羅焔(カルラえん)で燃えます。その火を頂いてくるのです。」 「何のためにですか?」 「その炎で、高野山の一週間の外界から来た毒を、焼き尽くすのです。」 「じゃあ、これから、高野山を走り回るんですか?」 「はい。」 「それは大変だなあ〜」 姉さんは、カーテンを閉めた。 「ここは、カーテンを開けるたびに、いろんなのが出てくるなあ〜。」 福之助が、とぼけた声で言った。 「まるで、カーテン劇場ですね。」 「開けると、また変なのが出てくるから、寝よう!」 「それがいいですね。」 「福之助、頼みがあるんだけど。」 「何ですか?」 「朝まで起きてて。」 「え〜〜〜?」 「見張っててよ。」 「見張る?何をですか?」 「オバケだよ。」 「そんなのいませんよ。」 「お願い!」 「紅流の達人がどうしたんですか?」 「そんなの関係ないの。ねっ、お願い!」 姉さんは、福之助に手を合わせた。 「わたしは、お地蔵さんじゃありませんよ。」 「お願いします!」 「しょうがないなあ〜!」
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