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作品名:高野山 人間村 作者:毬藻

第61回   迦楼羅焔ランナー
「あ〜〜、もう十時過ぎたよ!寝ないと明日は来ないから、寝るぞ!」
「寝なくても、時間が来れば、明日は来ますよ。」
「人間は、寝て死んで、起きて生まれ変わって、明日になるの。」
「変わった考えだなあ〜。」
「じゃあ、おまえはロボットだから、起きとけ。」
「え〜〜〜〜!?」
「ロボットは、三時間で充電完了だろう。」
姉さんは、用心深く、窓のカーテンを開けてみた。
「あんだ、ありゃあ〜!?」
アニーは、トイレから出てきたところだった。
「何ですか?」
「聖火ランナーが走ってます。」
「えっ?」
アニーも覗いた。福之助も、アニーの後ろから覗いた。
「オリンピックですか?」
「なんで、こんなところで、今頃にオリンピックをやんだよ?」
「そうですね、変ですね。…分かった!幽霊のオリンピックだ!」
「アホ!」
「ちょおっと福ちゃん、わたしの肩に顎を乗せないでよ。」
「すいません、アニーさん!」
「おまえって、相変わらず、アホでドジだねえ〜。」
「アホでドジとは何ですか、失礼な!」
「あれは、迦楼羅焔(カルラえん)ランナーです。」
「かるらえんランナー?」
「迦楼羅(カルラ)は、毒を炎で焼き尽くし食べるという伝説上の鳥の名です。」
「あの人、忍者の格好をしてましたけど?」
「忍者隊月光です。」
「あれが、有名な忍者隊月光ですか…」
「天軸山の頂上に、不動明王が建っています。日曜の夜、十時になると、迦楼羅焔(カルラえん)で燃えます。その火を頂いてくるのです。」
「何のためにですか?」
「その炎で、高野山の一週間の外界から来た毒を、焼き尽くすのです。」
「じゃあ、これから、高野山を走り回るんですか?」
「はい。」
「それは大変だなあ〜」
姉さんは、カーテンを閉めた。
「ここは、カーテンを開けるたびに、いろんなのが出てくるなあ〜。」
福之助が、とぼけた声で言った。
「まるで、カーテン劇場ですね。」
「開けると、また変なのが出てくるから、寝よう!」
「それがいいですね。」
「福之助、頼みがあるんだけど。」
「何ですか?」
「朝まで起きてて。」
「え〜〜〜?」
「見張っててよ。」
「見張る?何をですか?」
「オバケだよ。」
「そんなのいませんよ。」
「お願い!」
「紅流の達人がどうしたんですか?」
「そんなの関係ないの。ねっ、お願い!」
姉さんは、福之助に手を合わせた。
「わたしは、お地蔵さんじゃありませんよ。」
「お願いします!」
「しょうがないなあ〜!」


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