「まったく、姉さんは非科学的だなあ〜。」 「うるさいな〜!」 「科学的に考えて、科学的に行動しないと、これからは生きては行けませんよ。」 「うるさいな〜。」 「科学的な心で行動しないと、損をしますよ。どったんばったんと生きていたら駄目ですよ。」 「まったく、うるさいなあ〜、科学的科学的って、おまえは科学の何なんだよ?」 「科学の子供です。」 「科学の子供?」 福之助は歌いだした。 「こころ優し〜、ららら科学の子〜〜♪」 「そりゃあ、アトムの歌だよ。」 『はっくしょん!』女性のくしゃみだった。 「あれ?今、おまえ、くしゃみした?」 「いいえ。わたしはロボットですから、そんな余計な無駄なものはしません。」 「そうだよな…」 姉さんは、ベッドに寝ているアニーに尋ねた。 「アニーさん、くしゃみしました。」 「いいえ。」 「おかしいなあ?」 福之助は、周りを見回した。 「もしかしたら、幽霊じゃないんですか?」 「おまえ、科学的なんだろう?変なこと言わないでよ。」 「幽霊は、ひょっとすると、いるかも知れません。」 「また〜〜〜!?」 「外に誰かいるんじゃないんですか?」 「誰かって?」 「幽霊とか。」 「また〜〜〜!?」 「ひょっとしたら。」 「じゃあ、おまえ、見てきてくんない。悪いけど。」 「はい、分かりました。」 福之助は出て行った。そして、すぐに戻って来た。 「誰もいませんでした。」 「変だねえ、じゃあさっきのは何なんだろうねえ?」 「やっぱり、幽霊なんじゃないんですか?」 「また〜〜〜!?」 アニーが発言した。 「通行人じゃないんですか?」 「あっ、そうですね。」 「そうですよ。」 姉さんは、少し安心した。 「でも、やけに近くで聞こえたなあ。」 「天井にいたんじゃないんですか?」 「何が?」 「幽霊が。」 「おまえ、さっきから、変なことばっかり言ってるよ。大丈夫か?」 「大丈夫です。正常です。」 「生きてる?」 「生きていません。ロボットですから。動いてるだけです。」 「あっ、そっか。」 アニーは、上半身を起こして、周りを見ていた。 「霊には、悪い霊と良い霊がいますから、もし幽霊だとしても、良い霊ですよ。」 「じゃあ、やっぱり今のは霊なんですか?」 「だとしても大丈夫です。天軸山(てんじくさん)一帯は、不動明王の剣で護られていますから。」 「不動明王の剣?」 「弘法大師が埋めたという宝剣です。天軸山のどこかに埋まっているそうです。」 「どこかに?」 「まだ発見されていないのです。それに、高野三山は、弘法大師の結界張られていますから、悪霊(あくりょう)は入れません。」 「弘法大師の結界…」 「こういうときは、祈って寝ましょう。」 アニーは、弘法大師の眠る天軸山の向こうの御廟(ごびょう)に向かって、静かに手を合わせた。 「南無大師遍照金剛(なむだいしへんじょうこんごう)、わたしたちを、お守りください!」
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