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作品名:高野山 人間村 作者:毬藻

第57回   不思議な人たち
「姉さん!」
「何だよ?」
「今度は、棺桶を担いでいます。」
「何だって?」
テーブルの席に戻って座っていた姉さんは、またやって来て、窓の外を見た。
「ほんとだ!?」
「何やってるんでしょうかねえ?」
「なんだか不気味だねえ。」
「みんな、公園の方に行きますよ。」
「こんな時間に、何やってるんだ?」
壁にかかってる時計を見ると、九時過ぎだった。
「死神が棺桶を担いでみたいだねえ…」
「死神は棺桶を担ぐんですか?」
「ああ。」
六人の者が、それぞれの棺桶を担いで、公園に向かっていた。
「不気味な人たちだねえ。」
「人間って、変なことが好きですねえ。」
「あれは、ひょっとしたら、妖怪かも知れないよ。」
「人間ですよ。」
アニーもやってきて覗いた。
「きっと、天文台に向かっているんだわ。あそこには、星の広場があるんですよ。」
「星の広場?」
「大きな星の見える広場なんです。」
「そこは、星がよく見えるんですか?」
「周りが真っ暗なんですよ。」
「怖〜〜〜い!」
「周りが明るいと、星が見えなくなるんですよ。だから真っ暗のほうがいいんです。」
「死神がやって来て、ノックしたりして!」
返事したのは福之助だった。
「姉さんは、非科学的だなあ〜。死神なんていませんよ〜。」
「馬鹿生意気なこと言ってるんじゃないよ。」
「あ〜〜、また言った、それ!」
アニーも見ていた。
「少し風が出てきましたねえ。」
「そうですねえ。あの棺桶は軽いんですか?」
「軽いんじゃないんですか。担いでるくらいですから。」
「わざわざあんなところまで行って、不思議な人たちだねえ。わたしには、あの人たちが妖怪にみえるよ。」
「ここらあたりは、ユーフォーも見られるんです。」
「ユーフォーなら見てみたいなあ〜。」
「ログハウスの天窓から見れるかも知れませんよ。」
「ああ、そうでしたね。」
姉さんは、天窓を見た。
「二段ベッドから見れるんですよね。」
「そうです。」
姉さんは、二段ベッドに登って、寝転んだ。壁際のボタンを押した。天窓を覆っていた屋根がスライドして開いた。星々がガラス越しに見えていた。
「わ〜〜、星が綺麗に見えてるわ〜!」
ロマンチックな星空が広がっていた。
「ユーフォー、やって来るかな〜。」
福之助は、冷たい返事をした。
「そんなものやって来ませんよ。」
「おまえって、ちっともロマンがないねえ〜。」
「そんなもの必要ありません。」
「ロマンがないと、駄目だよ人間は。」
「わたしは人間ではありません。」
「あっ、そっか。」
「ドラキュラが、上から覗いたりして。」
「おまえ、何言ってるんだよ?変なこと言うなよ!」
姉さんは怖くなって、急いで天窓を閉め降りてきた。



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