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作品名:高野山 人間村 作者:毬藻

第51回   中卒のインテリ
「兄貴。」
「なんだよ?」
「石鹸シャワーなんて、作るの大変だよ、そんなの。」
「ちょっとな。」
「素人じゃ無理だよ。」
「そんなに難しいかなあ?」
「そんな面倒なことするよりさ。」
「なんだよ?」
「お風呂の中に石鹸を入れて、その中に入って洗えばいいわけじゃん?アメリカ人みたいにさ。」
「…なるほど、そうだなあ。」
「だから兄貴のアイデアは、いつも駄目なんだよ。」
「でもそれじゃあ、風呂釜が汚れるじゃねえかよ。」
「あっ、そっか。」
「おまえも、俺と同じだなあ。」
「分かった!」
「なんだよ。」
「お風呂の外に、お湯の入った石鹸の入ったタライを置いて、そこで洗えばいいんだよ。」
「…なるほど。」
「洗い終わったら、シャワーで流せばいいんだよ。」
「なるほど!」
「いいでしょう〜。」
「アキラ、おまえ頭いいなあ。」
「まあね。」
「でも、あそこ、タライが置けるほど広いか?」
「ぎりぎりかもね。」
「でも、それじゃあ、特許になんねえな。」
「特許なんかにはならないよ。」
「じゃあ駄目じゃん。」
「どうして?」
「特許にならないと、金儲けできねえじゃねえかよ。」
「特許なんて難しいよ。素人には無理だよ。専門家でないと。」
「そうかなあ?」
「無理だって。」
「タワシくらいだった、できるんじゃないか?」
「タワシ?」
「例えばの話よ。そういうの。」
「例えばって、どういうの?」
「例えば、石鹸の入ったタワシとかよ。」
「まあた石鹸?兄貴、石鹸好きだねえ。」
「だから、例えばだよ。」
「そんなの、もうあるよ。」
「そうかあ?」
「そんなのあるよ。俺、どっかでみたことあるよ。」
「なにかないかな〜〜、儲かるものは…」
「兄貴、そういうのを、邪道の発明っていうんだよ。」
「邪道の発明?」
「金儲けで発明をしたって、いい物はできっこないよ。」
「うん?」
「お金は結果なんだよ。人に役立つ、いい物を作った結果なんだよ。」
「どういうことだよ?」
「金儲けだけを考えても、いい物はできないってこと。」
「なるほど…、おまえ、なかなかいいこと言うね。学歴がないわりには、大したもんだ。」
「心の問題よ。」
「心?」
「兄貴は、物を発明する前に、心を発明したほうがいいよ。」
「お〜〜、いいこと言うねえ!」
ショーケンは、ひたすら感心して聞いていた。
「おまえ、中卒のインテリだなあ〜。」
「高校中退の不良とは違うよ。」


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