「兄貴。」 「なんだよ?」 「石鹸シャワーなんて、作るの大変だよ、そんなの。」 「ちょっとな。」 「素人じゃ無理だよ。」 「そんなに難しいかなあ?」 「そんな面倒なことするよりさ。」 「なんだよ?」 「お風呂の中に石鹸を入れて、その中に入って洗えばいいわけじゃん?アメリカ人みたいにさ。」 「…なるほど、そうだなあ。」 「だから兄貴のアイデアは、いつも駄目なんだよ。」 「でもそれじゃあ、風呂釜が汚れるじゃねえかよ。」 「あっ、そっか。」 「おまえも、俺と同じだなあ。」 「分かった!」 「なんだよ。」 「お風呂の外に、お湯の入った石鹸の入ったタライを置いて、そこで洗えばいいんだよ。」 「…なるほど。」 「洗い終わったら、シャワーで流せばいいんだよ。」 「なるほど!」 「いいでしょう〜。」 「アキラ、おまえ頭いいなあ。」 「まあね。」 「でも、あそこ、タライが置けるほど広いか?」 「ぎりぎりかもね。」 「でも、それじゃあ、特許になんねえな。」 「特許なんかにはならないよ。」 「じゃあ駄目じゃん。」 「どうして?」 「特許にならないと、金儲けできねえじゃねえかよ。」 「特許なんて難しいよ。素人には無理だよ。専門家でないと。」 「そうかなあ?」 「無理だって。」 「タワシくらいだった、できるんじゃないか?」 「タワシ?」 「例えばの話よ。そういうの。」 「例えばって、どういうの?」 「例えば、石鹸の入ったタワシとかよ。」 「まあた石鹸?兄貴、石鹸好きだねえ。」 「だから、例えばだよ。」 「そんなの、もうあるよ。」 「そうかあ?」 「そんなのあるよ。俺、どっかでみたことあるよ。」 「なにかないかな〜〜、儲かるものは…」 「兄貴、そういうのを、邪道の発明っていうんだよ。」 「邪道の発明?」 「金儲けで発明をしたって、いい物はできっこないよ。」 「うん?」 「お金は結果なんだよ。人に役立つ、いい物を作った結果なんだよ。」 「どういうことだよ?」 「金儲けだけを考えても、いい物はできないってこと。」 「なるほど…、おまえ、なかなかいいこと言うね。学歴がないわりには、大したもんだ。」 「心の問題よ。」 「心?」 「兄貴は、物を発明する前に、心を発明したほうがいいよ。」 「お〜〜、いいこと言うねえ!」 ショーケンは、ひたすら感心して聞いていた。 「おまえ、中卒のインテリだなあ〜。」 「高校中退の不良とは違うよ。」
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