アキラは、ダイニングルームにいた。 「兄貴、何かあったの?」 「なんか、発明家の偉い人が来ててなあ。」 「誰?」 「忘れた。光るボールに乗って帰って行ったよ。」 「光るボール?」 「三メートルくらいの、でっけいボールだよ。」 「なんだそりゃあ?」 「おまえに見せてやりたかったなあ〜。」 「どういうの?」 「どういうのって、凄いんだよ。光って転がって行くんだよ。」 「転がって行くの?」 「ああ、転がって行くんだよ。」 「人を乗せて、転がるの?なんだそりゃあ?」 「でも、乗ってる人間は転がらないんだよ。」 「え〜〜〜、なにそれ。意味不明。」 「あ〜〜、見なきゃあ分かんねえな。」 「分かった!夢の話だ!」 「夢じゃねえよ。」 アキラは、何かを食していた。 「おまえ、何食べてんだよ。」 「味噌汁だよ。」 「味噌汁だけかよ?」 「そうだよ。悪い?」 「悪くはないけど、何の味噌汁だよ?」 「もやし。昨日買って忘れちゃってさ。もやしって、直ぐに悪くなるだろう。」 「もやしだけかよ。」 「そうだよ。悪い?」 「悪くはないけどよ、それ美味しいのかよ?」 「おいしいよ。兄貴も食べる?」 「俺はいいよ。橘さんとこで食べてきたから。」 「あ〜〜、ずるいなあ。」 「俺、もう風呂入って寝るよ。」 「もう寝るの?」 「なんだか疲れちゃったよ。」 「兄貴も疲れることがあるんだ?」 「ああ。今日は疲れた。おまえ、風呂入ったの?」 「ああ、さっき入ったよ。ちゃんと、身体洗ってから入ったから。」 「そう、じゃあ風呂の水、変える必要ねえな。」 「兄貴も同じだろう?」 「ああ、洗って入れば浴槽が汚れずに、後で掃除するのが楽だからな。」 「兄貴、掃除しないじゃん。」 「これからはやるよ。」 なぜか、クローンのショーケンは神経質で綺麗好きだった。 「人間ってのは、まったく面倒だなあ。」 「えっ、何が?」 「身体が汚れたら、いちいち風呂に入らなきゃあいけないしよ。」 「まあね。」 「何か、他にいい方法はないのかねえ?」 「えっ?」 「特殊な石鹸の空気で、身体を一気に綺麗にするとかさ。」 「石鹸の空気?そんなのはないよ。」 「あっ、いいこと思いついたぞ!」 「なに?」 「石鹸入りのシャワー!」 「なんだ、そりゃあ?」 「ジャ〜〜〜って、洗うだろう、それで終わり。」 「なるほどね、兄貴らしいや。」 「ひょっとしたら、こりゃあ大発明だぞ。特許になって大儲けができるぞ!」 「そんなの、もうどっかにあんじゃないの?」 「いいや、ないよ。」 ショーケンの目は新たな金儲けに輝いていた。 「問題は、石鹸の成分と量だな…」 アキラは冷たい目で、ショーケンを見ていた。
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