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作品名:高野山 人間村 作者:毬藻

第50回   ショーケンの大発明
アキラは、ダイニングルームにいた。
「兄貴、何かあったの?」
「なんか、発明家の偉い人が来ててなあ。」
「誰?」
「忘れた。光るボールに乗って帰って行ったよ。」
「光るボール?」
「三メートルくらいの、でっけいボールだよ。」
「なんだそりゃあ?」
「おまえに見せてやりたかったなあ〜。」
「どういうの?」
「どういうのって、凄いんだよ。光って転がって行くんだよ。」
「転がって行くの?」
「ああ、転がって行くんだよ。」
「人を乗せて、転がるの?なんだそりゃあ?」
「でも、乗ってる人間は転がらないんだよ。」
「え〜〜〜、なにそれ。意味不明。」
「あ〜〜、見なきゃあ分かんねえな。」
「分かった!夢の話だ!」
「夢じゃねえよ。」
アキラは、何かを食していた。
「おまえ、何食べてんだよ。」
「味噌汁だよ。」
「味噌汁だけかよ?」
「そうだよ。悪い?」
「悪くはないけど、何の味噌汁だよ?」
「もやし。昨日買って忘れちゃってさ。もやしって、直ぐに悪くなるだろう。」
「もやしだけかよ。」
「そうだよ。悪い?」
「悪くはないけどよ、それ美味しいのかよ?」
「おいしいよ。兄貴も食べる?」
「俺はいいよ。橘さんとこで食べてきたから。」
「あ〜〜、ずるいなあ。」
「俺、もう風呂入って寝るよ。」
「もう寝るの?」
「なんだか疲れちゃったよ。」
「兄貴も疲れることがあるんだ?」
「ああ。今日は疲れた。おまえ、風呂入ったの?」
「ああ、さっき入ったよ。ちゃんと、身体洗ってから入ったから。」
「そう、じゃあ風呂の水、変える必要ねえな。」
「兄貴も同じだろう?」
「ああ、洗って入れば浴槽が汚れずに、後で掃除するのが楽だからな。」
「兄貴、掃除しないじゃん。」
「これからはやるよ。」
なぜか、クローンのショーケンは神経質で綺麗好きだった。
「人間ってのは、まったく面倒だなあ。」
「えっ、何が?」
「身体が汚れたら、いちいち風呂に入らなきゃあいけないしよ。」
「まあね。」
「何か、他にいい方法はないのかねえ?」
「えっ?」
「特殊な石鹸の空気で、身体を一気に綺麗にするとかさ。」
「石鹸の空気?そんなのはないよ。」
「あっ、いいこと思いついたぞ!」
「なに?」
「石鹸入りのシャワー!」
「なんだ、そりゃあ?」
「ジャ〜〜〜って、洗うだろう、それで終わり。」
「なるほどね、兄貴らしいや。」
「ひょっとしたら、こりゃあ大発明だぞ。特許になって大儲けができるぞ!」
「そんなの、もうどっかにあんじゃないの?」
「いいや、ないよ。」
ショーケンの目は新たな金儲けに輝いていた。
「問題は、石鹸の成分と量だな…」
アキラは冷たい目で、ショーケンを見ていた。



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