きょん姉さんは、ぼやいていた。 「高野山ってところは、いろいろと賑やかだなあ〜。」 「何が賑やかなんですか?」 「火の玉は飛ぶし、走って行くし。」 「そうですねえ。」 「次は何だ?」 「次は何でしょうね。楽しみですね。」 「何が楽しみだよ!」 「今度は何でしょうねえ?カーテンを開けると、オバケだったりして。」 「おまえ、変なこと言うんじゃないよ〜。」 「冗談ですよ。」 姉さんは気になって、バーベキュー広場側の窓のカーテンを、少し開けて覗いてみた。 「なんだ、ありゃあ!?」 「どうしたんですか?」 「棺桶だよ。」 「かんおけ?」 「棺桶に人が入ってるよ。」 「今ですか?」 「今だよ。」 「え〜〜、どういうことですか?」 福之助は、姉さんの背後に回って覗き込んだ。 「あ〜〜、ほんとだ。」 棺桶は、隣の隣のログハウスの前に、三基置かれてあった。 アニーが来て、同じように覗いた。 「あれは、天体観測ベッドです。」 「あ〜、さっき言ってましたね。そういうの。」 「あの人たちは、天体マニアなのです。」 「寝て、ずっと星を観るんですか?」 「はい。手に双眼鏡を持ってるでしょう。」 「そうですね。あのベッドは高いんですか?」 「値段?」 「そう、値段。」 「けっこう高いですよ。十万はしますよ。」 「姉さん、棺桶には、星の下で寝る会と書いてあります。」 「星の下で寝る会…、いろんな会があるんだなあ。」 「なんか、ロマンチックでいいですねえ。」 「おまえに、ロマンチックが分かんのかよ?」 「なんとなく分かります。」 「嘘つけ!」 「失礼ですよ、そういう言い方は。」 「馬鹿生意気なこと言ってるんじゃないよ。」 「あ〜〜、また言った、それ!」 「ありゃあ、絶対に棺桶だよ。あ〜〜〜、気味悪い。」 「姉さんは、情緒がないなあ〜。」 「朝には、骨になってミイラになってたりして。あ〜不気味!」 「姉さんは、非科学的だなあ。」 「馬鹿生意気なこと言ってるんじゃないよ。」 「あ〜〜、また言った、それ!」 アニーが呟いた。 「骨と言えば、高野山には、有名な人の骨が、た〜くさんあるんですよ。」 「あっ、そうか。」 「この山の向こうには、弘法大師のミイラもあります。」 「え〜〜〜!」 姉さんは、急に寒くなった。 「お〜〜、怖!」 姉さんは、カーテンを閉めた。
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