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作品名:高野山 人間村 作者:毬藻

第49回   馬鹿生意気
きょん姉さんは、ぼやいていた。
「高野山ってところは、いろいろと賑やかだなあ〜。」
「何が賑やかなんですか?」
「火の玉は飛ぶし、走って行くし。」
「そうですねえ。」
「次は何だ?」
「次は何でしょうね。楽しみですね。」
「何が楽しみだよ!」
「今度は何でしょうねえ?カーテンを開けると、オバケだったりして。」
「おまえ、変なこと言うんじゃないよ〜。」
「冗談ですよ。」
姉さんは気になって、バーベキュー広場側の窓のカーテンを、少し開けて覗いてみた。
「なんだ、ありゃあ!?」
「どうしたんですか?」
「棺桶だよ。」
「かんおけ?」
「棺桶に人が入ってるよ。」
「今ですか?」
「今だよ。」
「え〜〜、どういうことですか?」
福之助は、姉さんの背後に回って覗き込んだ。
「あ〜〜、ほんとだ。」
棺桶は、隣の隣のログハウスの前に、三基置かれてあった。
アニーが来て、同じように覗いた。
「あれは、天体観測ベッドです。」
「あ〜、さっき言ってましたね。そういうの。」
「あの人たちは、天体マニアなのです。」
「寝て、ずっと星を観るんですか?」
「はい。手に双眼鏡を持ってるでしょう。」
「そうですね。あのベッドは高いんですか?」
「値段?」
「そう、値段。」
「けっこう高いですよ。十万はしますよ。」
「姉さん、棺桶には、星の下で寝る会と書いてあります。」
「星の下で寝る会…、いろんな会があるんだなあ。」
「なんか、ロマンチックでいいですねえ。」
「おまえに、ロマンチックが分かんのかよ?」
「なんとなく分かります。」
「嘘つけ!」
「失礼ですよ、そういう言い方は。」
「馬鹿生意気なこと言ってるんじゃないよ。」
「あ〜〜、また言った、それ!」
「ありゃあ、絶対に棺桶だよ。あ〜〜〜、気味悪い。」
「姉さんは、情緒がないなあ〜。」
「朝には、骨になってミイラになってたりして。あ〜不気味!」
「姉さんは、非科学的だなあ。」
「馬鹿生意気なこと言ってるんじゃないよ。」
「あ〜〜、また言った、それ!」
アニーが呟いた。
「骨と言えば、高野山には、有名な人の骨が、た〜くさんあるんですよ。」
「あっ、そうか。」
「この山の向こうには、弘法大師のミイラもあります。」
「え〜〜〜!」
姉さんは、急に寒くなった。
「お〜〜、怖!」
姉さんは、カーテンを閉めた。


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