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作品名:高野山 人間村 作者:毬藻

第44回   クローンのショーケン
先生は、集会所を出ると、周りを見渡した。
「あのドーム型のハウスは、何件あるんですか?」
先生の隣には、龍次がいた。
「人間村には、ちょうど五十軒あります。」
ショーケンが歩いて来るのが見えた。
龍次が声をかけた。
「ショーケンさん、夜の散歩?」
ショーケンは、みんなの前で止まった。
「なんか賑やかそうだから来たんだけど、みなさん集まって何してるの?」
先生は、ショーケンを上から下まで、じろじろと見ていた。
「あなた、ショーケン?」
ショーケンは素直に答えた。
「そうです。」
「前略おふくろ様を、よく見てましたよ。あれは実に良かったなあ〜。」
「ありがとうございます。」
「でも、おかしいなあ〜?」
「えっ?」
「若いよ。だって、もう五十過ぎでしょう?」
ショーケンの返事はなかった。龍次が答えた。
「先生、実は、このショーケンさんは、クローンのショーケンさんなんです。」
「クローン…」
「はい。」
「ほんとうですか、それは?」
ショーケンが答えた。
「はい、ほんとうです。政府の秘密のクローン研究施設で生まれたんです。」
「え〜〜〜、ほんと?」
先生は、目を丸くして驚いていた。
「そういえば、以前にそういう話を聞いたことがあります。極秘の施設があるって。」
一瞬、会話が途絶えた。
「驚いたなあ〜。それで、その施設には、どのくらいの人がいたんですか?」
「正確には、分かりませんが、百人くらいはいたと思います。」
「百人も…、でもどうしてこんなところに?」
「逃げてきたんです。」
「逃げて…、ってことは、今も追われているってことですか?」
「はい。」
「政府に?」
「はい。」
「そういうことですか…、でもここは人間の聖地の高野山だから、追ってはきませんね。」
「だから、ここに来ました。」
「なるほど。」
先生は、龍次を見た。
「確か、保土ヶ谷くんも、そういう理由でここに来たんだよね?」
「そうです。」
「過激なことさえしなければ、大丈夫だよ。強引には、ここまでは来ないよ。」
「最近は、過激なデモや集会はやっていません。」
「そのほうが利口だよ。なにせ、相手は一とゼロで判断しているコンピュータだから。」
「最近になって、相手の指し手が見えるようになりました。やっぱり、コンピュータなんです。」
「そうだね。」
「コンピュータ将棋も、数回やってると、パターンが見えてきます。」
「そういうことだね。」
「先生、最近は囲碁とかはやっていないんですか?」
「忙しくって、やってないなあ〜。」
ショーケンは、龍次が、先生先生と言うもので、黙って聞いていた。ときどき、ヨコタンを見ながら。
隊員が、食堂の方から駆けてやってきた。
「保土ヶ谷さん、掃除は終わりました。」
「ご苦労さん!」
みんなは、ドラゴンボールに向かって歩き出した。




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