先生は、集会所を出ると、周りを見渡した。 「あのドーム型のハウスは、何件あるんですか?」 先生の隣には、龍次がいた。 「人間村には、ちょうど五十軒あります。」 ショーケンが歩いて来るのが見えた。 龍次が声をかけた。 「ショーケンさん、夜の散歩?」 ショーケンは、みんなの前で止まった。 「なんか賑やかそうだから来たんだけど、みなさん集まって何してるの?」 先生は、ショーケンを上から下まで、じろじろと見ていた。 「あなた、ショーケン?」 ショーケンは素直に答えた。 「そうです。」 「前略おふくろ様を、よく見てましたよ。あれは実に良かったなあ〜。」 「ありがとうございます。」 「でも、おかしいなあ〜?」 「えっ?」 「若いよ。だって、もう五十過ぎでしょう?」 ショーケンの返事はなかった。龍次が答えた。 「先生、実は、このショーケンさんは、クローンのショーケンさんなんです。」 「クローン…」 「はい。」 「ほんとうですか、それは?」 ショーケンが答えた。 「はい、ほんとうです。政府の秘密のクローン研究施設で生まれたんです。」 「え〜〜〜、ほんと?」 先生は、目を丸くして驚いていた。 「そういえば、以前にそういう話を聞いたことがあります。極秘の施設があるって。」 一瞬、会話が途絶えた。 「驚いたなあ〜。それで、その施設には、どのくらいの人がいたんですか?」 「正確には、分かりませんが、百人くらいはいたと思います。」 「百人も…、でもどうしてこんなところに?」 「逃げてきたんです。」 「逃げて…、ってことは、今も追われているってことですか?」 「はい。」 「政府に?」 「はい。」 「そういうことですか…、でもここは人間の聖地の高野山だから、追ってはきませんね。」 「だから、ここに来ました。」 「なるほど。」 先生は、龍次を見た。 「確か、保土ヶ谷くんも、そういう理由でここに来たんだよね?」 「そうです。」 「過激なことさえしなければ、大丈夫だよ。強引には、ここまでは来ないよ。」 「最近は、過激なデモや集会はやっていません。」 「そのほうが利口だよ。なにせ、相手は一とゼロで判断しているコンピュータだから。」 「最近になって、相手の指し手が見えるようになりました。やっぱり、コンピュータなんです。」 「そうだね。」 「コンピュータ将棋も、数回やってると、パターンが見えてきます。」 「そういうことだね。」 「先生、最近は囲碁とかはやっていないんですか?」 「忙しくって、やってないなあ〜。」 ショーケンは、龍次が、先生先生と言うもので、黙って聞いていた。ときどき、ヨコタンを見ながら。 隊員が、食堂の方から駆けてやってきた。 「保土ヶ谷さん、掃除は終わりました。」 「ご苦労さん!」 みんなは、ドラゴンボールに向かって歩き出した。
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