ヨコタンは、豊沢先生に歩み寄ると、深く頭を下げた。 「先生、お久しぶりです。白鳥洋子です。」 「しらとり、さん?」 「宇宙工学研究所の白鳥です。」 「あ〜〜、思い出しました!あなた、ここにいるの?いつから?」 「去年の十月からです。」 「あ〜〜、そうなの。」 「あそこは、体調を悪くして辞めました。」 「ああ、そうだったの。それは大変だったねえ。」 「また、ご指導のほど、よろしくおねがいします。」 ヨコタンは、深く頭を下げた。 「うん、じゃあ、ちょくちょく来ようかな。」 「先生、今日は?」 「近くに来たついでに来たんですよ。保土ヶ谷君や、一休さんや、一休さんの奥さんの顔が見たくなってね。」 豊沢先生は、一休さんの奥さんに気を使って返事をしていた。 「あ〜、そうなんですか。」 龍次が、掃除をしながら、ヨコタンに声を掛けた。 「ヨコタン、先生をゲストルームに連れてってくれない。掃除が済んだら、すぐに行くから。」 「龍次さん、掃除なんか若い人に任せて、一緒に来てくださいよ。」 龍次は、周りを見た。若い隊員たちが龍次たち三人を見ていた。 「それもそうだな。」 若い隊員たちが駆け寄って来た。 「わたしたちがやります!」 龍次は、モップを渡した。 「じゃあ、頼む!」 一休さんも明子も、若い隊員にモップを渡した。 「ここでは、ヨコタンと呼ばれているんです。」 「ヨコタン…、あ〜洋子たんで、ヨコタンですね?」 「そうです。」 「ここは、いいところですねえ。」 「はい。とってもいいところです。」 「人間村かあ、なるほどねえ。」 龍次が、先生に軽く会釈した。 「じゃあ、先生、行きましょう!」 「遠いの?」 「いや、すぐそこです。あの建物です。」 五人は、集会所に向かった。先生の横には、ヨコタンがついていた。 「先生は、確か、香川県出身ですよね?」 「そうです。」 「じゃあ、弘法大師と同じなんですねえ。」 「そうです。」 「これも、何かの縁ですねえ。」 「そうかも知れませんねえ。」 突然に、龍次が立ち止まった。 「あっ、忘れてた!あの若い人!」 明子が応じて答えた。 「龍次さん、大丈夫。システム担当のウメさんが、さっき集会所に連れて行ったわ。」 「さっきって?」 「わたしたちが、先生と、お話をしているとき。」 「ああ、そう。あ〜〜、良かった!」 集会所に着くと、ウメさんと、さっきの若者は、テーブル席に座って、話をしていた。龍次は、手を上げて挨拶した。 「ウメさん、ありがとう!頼むよ!」 「分かりました!」 龍次たちと、豊沢先生は、ゲストルームに入って行った。
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