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作品名:高野山 人間村 作者:毬藻

第22回   カラスの平吉
きょん姉さんは、ふと二段ベッドの上の天井に目をやった。
「来たときから気になっていたんですけど、ベッドの上のガラスは何ですか?」
アニーは、そのベッドの一段目に寝ていた。
「星空を見る窓です。」
「星空を見る窓?」
「天井が開いて、星空が見えるんです。」
姉さんは、ガラスを指差した。
「ここの天井がですか?」
「はい。上のベッドにスイッチがあるんです。」
「えっ!?」
姉さんは、ベッドに近づいてスイッチを探した。
「壁にあるでしょう、星のマークのボタンが。」
「あっ、あります、あります!」
「それを押すんです。」
「今、押しても大丈夫ですか?」
「大丈夫です。」
姉さんは、手が届かなかったので、ベッドの上に登った。スイッチを押した。
木の天井が開いた。
「うわ〜〜〜、空が見えるわ!」
「でしょう。」
「わ〜〜〜、いいわあ、これ。」
「今晩は、いい夜空じゃないかな〜?」
姉さんは、天窓を閉め、ベッドを降りた。
「早く寝ようっと!」
福之助が姉さんの顔を見た。
「星なんか見たって、お腹は膨れませんよ?」
「どういうこと?」
「食いしん坊には、無駄じゃあないんですかねえ?」
「なんだって!?」
「失礼しました!」
高野山の鐘が鳴っていた。壁時計は、六時を指していた。
「姉さん、ニュースの時間です。テレビを点けますか?」
「どうせ、猿人間のニュースだろう。後で見るからいいよ。」
「はい。」
姉さんは、ふと窓の外を見た。キャンピングカーが走っていた。
「あっ、キャンピングカーだ!」
アニーは、携帯電話でメールを見ていた。
「近くに、キャンピングカーの駐車場があるんですよ。」
「ああ、そうなんですか?」
「ニュースでやってましたよ。キャンピングカーのニュースを。最近、流行ってるんですって。」
「キャンピングカーか〜〜〜、いいなあ〜。」
福之助も大いに同意した。
「それはいいなあ〜〜、こんな仕事なんか辞めて、旅に出ましょうよ。」
「何言ってんだ、おまえ?」
「真っ赤な冗談ですよ〜〜!」
「真っ赤な冗談?おまえ、その日本語、おかしいよ。」
「ああ、そうですか?」
「プログラムの修正が必要だな。」
「はい、修正しておきます!」
「福之助、高野山の地図を持ってきてよ。」
「はい。」
福之助は、地図を持ってきて姉さんに渡した。
「はい。」
「電気を点けて、カーテンを閉めて。」
福之助は、電気を点けてから、カーテンをアルミの手を閉めようとした。
「あれ?なんですか、あれは?」
姉さんは、振り向いた。
「棺桶みたいなの運んでいます。」
「棺桶?」
姉さんは、見にやってきた。
「ほんとだ、何だりうねえ?」
アニーが答えた。
「上部が透明になってるやつでしょう?」
「はい。」
「星空簡易ベッドです。」
「星空簡易ベッド?」
「星空を見るベッドです。」
「星空を見るベッド?あれで寝ながら、星空を見るんですか?」
「はい。」
「外で見るんですか?」
「はい。」
姉さんは、想像した。
「面白そうですねえ〜。」
カラスが、カ〜と鳴いた。近くの木にとまって、こっちを見ていた。
「あっ、カラスの平吉だ!あいつ、まだ山に帰ってないのか!?不気味な奴だなあ…」


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