紋次郎が振り向いた。そして、龍次の前で深く頭を下げた。 「龍次さん、どうもありがとうございました!」 「部屋のこと?」 「はい。」 「気に入ったかな?」 「はい、とっても。」 「同居人も気に入ったかな?」 「ヨコタンさんのことですか?」 「そう。」 「はい、とってもいい人です。」 ヨコタンは、微笑んだ。 「それはよかった!」 「これから、どこに行くんですか?」 「ポンポコリンのとこだよ。」 「あっちこっち大変ですね。」 「まあね。」 龍次は、ヨコタンと紋次郎に手を振った。 「じゃあ!」 龍次は、ポンポコリンのドームハウスに向かって歩き出した。 「ヨコタンさんは、アラ・フォーですか?」 紋次郎の、いきなりの直球な質問に、ヨコタンはびっくりした。 「失礼ねえ〜!と言いたいところなんだけど、そうよ。」 「ずいぶんと若く見えますねえ。」 「ま〜た、またまた、お世辞言っちゃって!」 「お世辞じゃありません。」 「何歳に見える?」 「肌年齢でいいですか?」 「肌年齢?」 「わたしの目は、肌年齢を識別できるんです。」 「え〜〜〜、そうなの?」 「肌年齢は、二五歳です。」 「ほんと!?」 「ほんとうです。」 「わ〜〜〜、嬉しい〜〜!」 ヨコタンは、紋次郎に飛びついて、ジュラルミンのポッペに、キッスをした。紋次郎は、びっくりした。 「わぉ!」 「わぉ?」 「ヨコタンさんは、どうして結婚しないんですか?そんなに美人なのに?」 「あなたって、質問が直球ね!」 「いけませんか?」 「もう少し、遠慮して質問してよ。それに、わたしは女性よ。」 「…やっぱり、わたしは未熟なんですね。心が未熟なんですね…」 「そんなこと言ってないわ。」 「あ〜〜あ、まだまだ駄目だなあ〜。」 「わたしって、美人?」 「はい、その顔の各パーツの色と形とバランスは、九十二の美人です。」 「九十二の美人?」 「美人顔指数です。」 「そんなのがあるの?」 「はい。」 「紋ちゃんは、何歳なの?」 「わたしは、十年五ヵ月二七日です。」 「ってことは、十歳かあ。ずいぶんと、大人びた十歳だね。」 「ロボットですから、誕生したときから、こうなんです。」 「そういうことか。」 「人間は、結婚できていいですね。わたしは、一生結婚なんかできません。」 紋次郎は、そっぽを向いていた。 「そうねえ〜、紋ちゃんとだったら、結婚してもいいわ。」 紋次郎は目を開いて、びっくりした。 「え〜〜〜〜〜〜!?」
|
|