朝は、とことん朝で、晴れていた。透明感ある爽やかな針葉樹の香り, 爽やかで清涼感ある木の香りが、満ち満ちていた。ここには本物の朝があった。 「わ〜〜、いい朝の香りだわ〜〜。」 姉さんは、いつものようにルンルン気分だった。早起きの二匹のウサギが遠くで跳ねていた。これもまた早起きの小鳥たちが、なにやらと囀(さえず)りあっていた。 「小鳥たちは、元気ですね〜。」 アニーは「はい。」と言って答えた。カラスの平吉が「クワ〜ッツ!」と言って、上空を飛んで行った。 「あら、平吉が挨拶してるわ!」 「何と言ってるんですか?」 「やあ〜と言ってるわ。」 「そうなんですか。」 二人は、山小屋に辿り着いた。アニーは少し息切れだったが、姉さんは大丈夫だった。 「葛城さんって、肺と心臓が強いんですねえ〜。」 「これしき、どうってことはありません。」 アニーが鍵を開けると、二人は中に入った。二人は、人間村の見える窓際の席に座った。カーテンを開けた。人間村は、まだ静まり返っていた。二人は、双眼鏡カメラを取り出した。 「鎌田さん、わたしたちのこと知ってるんですか?」 「知ってるんじゃないですか。彼も忍者隊月光みたいですから。」 「えっ、そうなんですか!?」 「たぶん。私たちは、彼らに監視されて守られているんですよ。」 「え〜〜〜〜!?」 「なんだか変ですね。」 「はい。」 「ところで葛城さん。」 「何でしょうか?」 「葛城さんは、人間村についての資料は頂いているんですか?」 「ぜんぜん。保土ヶ谷龍次を知っているということだけで来てるんです。」 「人間村を調査しろということだけで?」 「はい。怪しい、非合法な団体でないかを調べるだけのためです。」 「ああ、そうなんですか。」 「何か?」 アニーは、ノートパソコンを布製の手さげ袋から取り出した。 「今朝、人間村の重要人物の顔写真と経歴が書かれているものが、本部から入ってきたんですけど、見たほうがいいですか?」 「そうですね〜、見ましょう。」 アニーは、ノートパソコンの電源を入れた。直ぐに出た。 「これです。」 「保土ヶ谷龍次は知ってますね?」 「はい。」 「この人は?」 「知ってます。甲賀忍です。」 「この人は?」 「知りません。」 知りませんが続いた。 六人目だった。知らない顔だった。でも、どこかで見たような顔だった。 「鶴丸隼人…、鶴丸!?」 姉さんは、経歴を見た。 「風魔忍術の達人。父は、風魔忍術の鶴丸隼太。」 姉さんは、思わず息を呑み、びっくりした。 「え〜〜〜〜〜!?」 「ひょっとして、昨日話してた方の?」 「はい、そうです!」 姉さんは、感激して呆然と写真を見ていた。 「思い出したわ。この人、この前、道で遭遇した人だわ。」 「いつですか?」 「踊り睡拳で逃げてきたときの人だわ。」 「そうなんですか。」 ドームハウスから、誰か出てきた。二人は、双眼鏡カメラを覗いた。 「龍ちゃんだわ。」 保土ヶ谷龍次だった。違うドームハウスからも出てきた。 「あっ、この人だわ!」 「鶴丸隼人。」 鶴丸隼人は木刀を持っていた。屈伸運動をすると、突然走り出した。円を描くように、そして大きくジャンプして、木刀で空を斬った。 「あれは、風魔流の風飛び斬り!」 「なんですか、それは?」 「敵の風上に回って、風の勢いで大きく飛んで斬る技です。」 二人は、双眼鏡カメラの倍率を上げた。隼人は木刀を持って踊るように一人稽古を始めた。 「あの足の運びは、風魔流・鬼剣舞(おにけんばい)!」 「おにけんばい?」 「邪悪なる気を払い、清める舞いです。」
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