きょん姉さんとアニーは、体操が終わると直ぐに帰って来た。 「あ〜〜〜、お腹空いちゃった!」 福之助はテーブルに座って、右手で左の肩を押さえていた。 「どうしたんだい、福之助?」 「肩が、おかしいんです。」 「どうしたの?」 「窓から、姉さんの体操を見て真似をしてたら、コキッと音がして突然動かなくなったんです。」 「あ〜〜〜、また外れたんだ!今度は肩かよ?」 姉さんは、福之助の後ろに回った。 「立ってみろ!」 「はい。」 姉さんは、福之助の左腕を持ち上げ、中腰で右肩に担いだ。 「持ち上げるぞ!」 「はい。」 姉さんは、一気に持ち上げた。コキッと音がした。姉さんは、福之助から離れた。 「どうだ、入ったか?」 福之助は、ゆっくりと、左腕を回した。動いた。 「動きました〜〜!」 「良かったな〜。」 「あ〜〜、良かった!」 「福ちゃん、良かったわね〜。」 「あ〜〜、なんか冷たいものないかい?アメリカ大統領の好きな抹茶アイスとか?」 「あります!抹茶ソフトクリームが!」 「いいね〜〜、それちょうだい!」 「はい!」 福之助は、冷蔵庫から持って来た。「はい!」 「お〜〜〜、いいね〜!」 「福ちゃん、わたしも!」 「えっ、アイスを食べるんですか?」 「そう、同じものをちょうだい!」 「分かりました。」 なにやら、姉さんの真似をしたがるアニーだった。 「まるで、マキちゃんみたい。」 「マキちゃん?」 「子供の頃、わたしの真似ばっかりする子がいたんですよ。」 「あ〜そうなの。気持ち分かるわ。」 「えっ?」 福之助がアイスを持って来た。「はい。」「ありがとう。」 「葛城さんって、とっても明るくって元気なんだもん。きっと憧れるんだわ。」 「そうですか?」 「独自な生き方が素晴らしいわ。わたしもあやかろうと思って。」 「わたしにですか?」 「はい。」 「わたしにあやかる?秀才のアニーさんが?」 「誰にも真似しない、自由な生き方って言うか、そういうところが素敵です。」 「まいったな〜〜。」 「いつ頃から?」 「子供のときからですよ。他人と同じ事をするのが嫌いだったんです。」 「う〜ん、なるほど。じゃあ、自分の意思なんですね。」 「はい、たぶん。」 「たぶん?」 「ひょっとしたら、父からの影響なのかも知れません。」 「お父様の?」 「父は、男に頼るようなだらしない女にはなるな!と言ってました。」 「男に頼るようなだらしない女…」 「男に頼る女は、最初は可愛いと思うが、次第に能無しのだらしない女と思うようになり、嫌になってくる。と言ってました。」 「なるほど、その通りです。」 「でも、やっぱり、自分の性格かな?頼りっぱなしってのは嫌いなんです。」 「そうなんですか。」 「アニーさんも?」 「似てるけど、ときどき不安になるときもあるんですよ。」 「不安に?」 「まだまだ、弱いところがあるんですよ。」 「ふ〜〜〜ん。」 姉さんには、分からない世界だった。 「食べ物が無くなると、不安になりますけどね〜。」 「そうなんですか?」 「結局、自分は自分ですから。どうあがいても。」 「なるほどね!」 福之助は、左の肩を回していた。 「あんまり回すと、また外れるぞ!」 「一度、ロボット病院に連れて行ったほうがいいんじゃないかしら?」 「近くにありますか?」 「そうですね〜、高野山テクノロジー研究所じゃ、ちょっとまずいですね。」 「ロボットの番号を見れば、政府のロボットだと分かりますからね〜。」 「そうだ!」 「どうしたんですか?」 「この近くに、江来(えらい)博士がいるんですよ。」 「えらい博士?」 「ロボット工学で有名な方です。ハンプティ・ダンプティの家に住んでいるんですよ。」 「そんなに近くなんですか?」 「はい。ひょっとしたら直してくれるかも知れません。行ってみましょうか?」 「そうですね。」 「それじゃあ、朝の人間村偵察が終わったら行きましょう!」 「はい!」 「歯を磨いたら、食事にしましょう!」 「はい!」
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