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作品名:高野山 人間村 作者:毬藻

第185回   自分は自分
きょん姉さんとアニーは、体操が終わると直ぐに帰って来た。
「あ〜〜〜、お腹空いちゃった!」
福之助はテーブルに座って、右手で左の肩を押さえていた。
「どうしたんだい、福之助?」
「肩が、おかしいんです。」
「どうしたの?」
「窓から、姉さんの体操を見て真似をしてたら、コキッと音がして突然動かなくなったんです。」
「あ〜〜〜、また外れたんだ!今度は肩かよ?」
姉さんは、福之助の後ろに回った。
「立ってみろ!」
「はい。」
姉さんは、福之助の左腕を持ち上げ、中腰で右肩に担いだ。
「持ち上げるぞ!」
「はい。」
姉さんは、一気に持ち上げた。コキッと音がした。姉さんは、福之助から離れた。
「どうだ、入ったか?」
福之助は、ゆっくりと、左腕を回した。動いた。
「動きました〜〜!」
「良かったな〜。」
「あ〜〜、良かった!」
「福ちゃん、良かったわね〜。」
「あ〜〜、なんか冷たいものないかい?アメリカ大統領の好きな抹茶アイスとか?」
「あります!抹茶ソフトクリームが!」
「いいね〜〜、それちょうだい!」
「はい!」
福之助は、冷蔵庫から持って来た。「はい!」
「お〜〜〜、いいね〜!」
「福ちゃん、わたしも!」
「えっ、アイスを食べるんですか?」
「そう、同じものをちょうだい!」
「分かりました。」
なにやら、姉さんの真似をしたがるアニーだった。
「まるで、マキちゃんみたい。」
「マキちゃん?」
「子供の頃、わたしの真似ばっかりする子がいたんですよ。」
「あ〜そうなの。気持ち分かるわ。」
「えっ?」
福之助がアイスを持って来た。「はい。」「ありがとう。」
「葛城さんって、とっても明るくって元気なんだもん。きっと憧れるんだわ。」
「そうですか?」
「独自な生き方が素晴らしいわ。わたしもあやかろうと思って。」
「わたしにですか?」
「はい。」
「わたしにあやかる?秀才のアニーさんが?」
「誰にも真似しない、自由な生き方って言うか、そういうところが素敵です。」
「まいったな〜〜。」
「いつ頃から?」
「子供のときからですよ。他人と同じ事をするのが嫌いだったんです。」
「う〜ん、なるほど。じゃあ、自分の意思なんですね。」
「はい、たぶん。」
「たぶん?」
「ひょっとしたら、父からの影響なのかも知れません。」
「お父様の?」
「父は、男に頼るようなだらしない女にはなるな!と言ってました。」
「男に頼るようなだらしない女…」
「男に頼る女は、最初は可愛いと思うが、次第に能無しのだらしない女と思うようになり、嫌になってくる。と言ってました。」
「なるほど、その通りです。」
「でも、やっぱり、自分の性格かな?頼りっぱなしってのは嫌いなんです。」
「そうなんですか。」
「アニーさんも?」
「似てるけど、ときどき不安になるときもあるんですよ。」
「不安に?」
「まだまだ、弱いところがあるんですよ。」
「ふ〜〜〜ん。」
姉さんには、分からない世界だった。
「食べ物が無くなると、不安になりますけどね〜。」
「そうなんですか?」
「結局、自分は自分ですから。どうあがいても。」
「なるほどね!」
福之助は、左の肩を回していた。
「あんまり回すと、また外れるぞ!」
「一度、ロボット病院に連れて行ったほうがいいんじゃないかしら?」
「近くにありますか?」
「そうですね〜、高野山テクノロジー研究所じゃ、ちょっとまずいですね。」
「ロボットの番号を見れば、政府のロボットだと分かりますからね〜。」
「そうだ!」
「どうしたんですか?」
「この近くに、江来(えらい)博士がいるんですよ。」
「えらい博士?」
「ロボット工学で有名な方です。ハンプティ・ダンプティの家に住んでいるんですよ。」
「そんなに近くなんですか?」
「はい。ひょっとしたら直してくれるかも知れません。行ってみましょうか?」
「そうですね。」
「それじゃあ、朝の人間村偵察が終わったら行きましょう!」
「はい!」
「歯を磨いたら、食事にしましょう!」
「はい!」



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