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作品名:高野山 人間村 作者:毬藻

第184回   朝の紅流体操
次の日の朝が、アサ〜〜〜〜っとやって来た。六時だった、福之助は胸のスピーカーから目覚ましの音楽『ロックロブスター』を鳴らしてやってきた。姉さんは、直ぐに目を開けた。
「うっるさいね〜〜、その音楽!もっとソフトなのはないのかよ〜〜!」
「それだと、起きません。」
「わたしは、そんな鈍感じゃないよ!」
アニーも目を覚ました。「もっと、スローテンポなのないの?」
「スローテンポですか、じゃあリクエストがあったら言ってください。変えておきます。」
「人間はロボットじゃないんだからね。急には目覚めないの。」
「分かりました。」
二人は、スローモーションを見てるかのように起き上がった。
「コーヒーにしますか?紅茶にしますか?緑茶にしますか?」
「朝は、血糖値が落ちてるから、砂糖の入ったコーヒーでいいよ。」
「福ちゃん、わたしもそれでいいわ。」
「はい、分かりました。」
姉さんは、洗面所に行き、うがいをして戻って来た。アニーも同様に戻って来た。
「あれ?歯磨きはしないんですか?」
「甘いコーヒーを飲んで血糖値を上げて、脳細胞を元気にしてから。」
「わたしも、同じ。」
「人間は、色々と大変ですね〜。」
二人は、まだまだ動きが緩慢だった。
「角砂糖は、いくつ入れますか?」
「二個!」「わたしも、二個!」
「はい。」
姉さんは、テーブルの前に座り込んだ。アニーはトイレに行った。
福之助はコーヒーを置いた。
「ありがとう。」
アニーが戻ってきて、姉さんと対面側に座った。「福ちゃん、ありがとう。」
福之助が気遣った。「気分はどうですか?」
「とってもいいわ。大丈夫!」
「それは良かった。」
姉さんもアニーも、味わうようにコーヒーを飲み始めた。姉さんは、リモコンでテレビを点けた。チャンネルは、高野山テレビになっていた。ちょうどニュースをやっていた。

 昨夜零時頃 天軸山上空に 二日前と同じような緑色の光る物体が現れました
 その物体は あっと言う間に カミナリと共に消えて無くなったそうです

「昨夜の球体だわ。深夜に帰って来たんだわ。」
「ユーフォーサンダーですね。」
「じゃあ、やぱり同じ人が乗ってたのかしら?」
「その確立は、大ですね。」
「アニーさん、昨夜のユーフォーは夢ではなかったんですよ。」
「分かってます。」
姉さんは、コーヒーを飲み終えると元気になった。トイレに行き、寝てるときに溜まった尿を出すと、台所に行き、水を一息で飲み干した。パジャマのままで「体操をしてくる!」と言い残して、颯爽と出て行った。福之助は驚いた。
「わお〜〜!」
姉さんは、バーベキュー広場の芝生の上で、奇妙な紅流の体操をやっていた。アニーは、まだコーヒーを飲んでいた。窓の外の姉さんを見ながら。
「元気いいわね〜〜。」
「いつも、あの調子なんです。急に元気になるんです。朝食の前は、必ず体操をするんです。」
アニーも立ち上がった。
「わたしもやってこよ〜〜っと!」アニーも出て行った。

「いい空気ですね〜〜〜!」
「アニーさんもやるんですか?」
「はい。教えてください。」
「紅流ですか?」
「はい。」
「じゃあ、わたしの真似をしてください。」
「はい。」
鎌田が近くの遊歩道を歩いていた。
「あっ、鎌田さんだ!」
鎌田が二人に声をかけた。
「おはようございます!体操ですか?」
「はい!」
鎌田がやってきた。
「変わった体操ですねえ?」
「紅流なんです。」
「それは素晴らしい!わたしにも教えてくれませんか?」
「いいですよ。わたしの真似をしてください。」
三人は、紅流の体操をやり始めた。時々、型を決めながら。
「テヤ〜!」「テヤ〜!」「テヤ〜!」
姉さんは、体操の終わりに新しい型を披露した。
「両手を胸で合わせて〜〜、合掌!高野槙マキ〜!と言ってください。」
「高野槙マキ〜!」「高野槙マキ〜!」
「そのまま、両足を根を張るように楽に開いて、合わせた両手をゆっくりと高野槙の枝のように天に伸ばしま〜〜〜す!」
二人は真似をした。
「高野槙のように〜〜天高く〜〜!…頂点まで達したら、深呼吸しながら、ゆっくりと両手を降ろしま〜す!」


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