「この山ぶどうジュース、美味しいな〜。」 きょん姉さんは、山ぶどうジュースを電子レンジで温めて飲んでいた。福之助が隣に座って見ていた。 「そのジュース、くせになって、やばいんじゃないですか?」 「やばい?別にやばくはないよ。毒じゃないよ。」 「やばいってのは、とってもグッドという意味です。」 「なんだって?」 「非常に美味しいという意味です。」 「まるっきし逆じゃないかよ。」 「最近は、そういう意味で使われているんです。」 「また〜〜〜?」 「ほんとうです。」 「わたし、暇なもので、ず〜〜っとテレビを見てたんです。そう言ってました。」 「ほんとかよ〜。」 「言葉は、日々変わってるんですね。言葉は生きているんですね。」 アニーが起き上がった。そして歌いだした。 「ボキャブラはみんな生〜きている〜♪」 姉さんがが「ボキャブラって何?」と福之助に尋ねた。 「ボキャブラリーのことじゃないんですかね〜。語彙(ごい)のことです。」 「じゃあ、アニーさん、駄洒落を言ったんだ〜!?」 「酔うと、水平思考が働くんですね〜〜。」 「アニーさんが、駄洒落を言うなんて、初めてですね〜。」 アニーは、君子豹変するように、きりっとした顔で起き上がった。 「もう、酔いは覚めました。」 姉さんは、きょとんとしてアニーを見ていた。 「福ちゃん、ポカリスケットある?」 「そんなものはありません。」 「わ〜〜、面白い!」 「じゃあ、わたしにも山ぶどうジュースをちょうだい。炭酸水を入れてちょうだい。」 「はい!」 「アニーさん、もう酔いは覚めました?」 「はい、覚めました!まだちょっと変な駄洒落がでてきておかしいですけど。」 「そうですね。」 「酔いは、脳の機能が、エチルアルコールによって抑制される症状です。脳の麻痺です。」 「はい!」 「脳の麻痺は、大脳の麻痺から始まるため、判断力、集中力、抑止力等が低下する。その結果、脳の本能的と呼ばれる機能が軽い興奮状態となり、気が大きくなったり、気分が良くなったりする酒酔い状態となります。」 「でも、わたしは、気分が悪くなるんですけど?」 「それは、アセトアルデヒドによる症状です。」 「アセトアルデヒド?」 「体内でアルコールを分解するできる有毒物質です。これが血中に蓄積されると心拍数の増加、嘔吐などの状態が引き起こされます。この症状が現れる人と現れない人がいるんです。」 「じゃあ、それだわ、わたし。」 「お気の毒です。」 「二日酔いは?」 「アセトアルデヒドによるものです。二日酔いの状態では脳がむくんでいます。」 「だから、頭が痛いんだ?」 「そうです。」 姉さんと話してるうちに、アニーは極めて正常に戻っていた。福之助が、炭酸入り山ぶどうジュースを持って来た。「はい。」 「どうもありがとう。」アニーは、姉さんと対面側に座ると、一気に半分ほど飲んだ。「おいしい!」福之助は、なぜか床に正座して座った。 「どうしたの福ちゃん、そんなところに座って?」 「わたしは、ここでいいんです。」 「脚が辛いでしょう?」 「ちっとも辛くなんかありません。」 「そう?」 アニーは立ち上がった。そして福之助の肩を揉み始めた。 「今日は、お疲れ様!大変だったわね。あれ、こちこちだわ!」 「こちこちって、わたしはロボットですから。いくら揉んでも柔らかくはなりません。」 「あ〜〜、そうだったわねえ〜〜。」 「アニーさん、変ですよ?」 「まだ少し酔ってるのかしら?あ〜おかしい!」 アニーは、再び座った。 「アニーさん、さっき変なこと言ってましたよ。」 「えっ?」 「ユーフォーが、鬼の大台ケ原に飛んで行った、とか。」 「そうですか?」 「まったく覚えてません?」 「…言ったような気がします。」 アニーは壁時計を見た。 「あら、もう九時だわ。けっこう寝たんですね〜」 「はい。」 「わたし、酔うと眠くなってくるんですよ。」 「いいですね〜。」 「あっ、思い出したわ。」 「えっ?」 「夢の続き。」 「どのような?」 「龍の玉には、名刺の人が乗っていて、大台ケ原でカツ丼を食べるんです。」 「それは面白い夢ですね〜〜。」 「葛城さん、お風呂に入ったんですか?」 「はい。」 「とってもいい匂いがするわ。私も入ろうっと!明日は早いし。」 「明日は何時に起きるんですか?」 「六時に起きましょう。」 「はい!」
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