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作品名:高野山 人間村 作者:毬藻

第173回   また明日!
「福之助、今何度だい?」
「二十三度です。」
「アニーさんが風邪をぶり返すといけないから、エアコンを点けてくれ。」
「はい!」
高野山の八時の鐘が鳴り響いていた。
「ここにいると、時間の感覚が違って感じるねえ〜、まだ八時かよ。」
「そうですか?日本中、時間は同じですけど。」
「つまんない答えだな〜。」
アニーは、気持ちよさそうに寝ていた。
「福之助、毛布を、もう一枚掛けてやれ。」
「はい。」
姉さんは、パソコンの前に座っていた。
「この人か〜〜〜。」
「何を調べてるんですか?」
「名刺の人だよ。発明学会の豊沢豊雄会長…」
「よく覚えてますね〜〜。」
「かなり強烈な拾い物だったからな〜〜。やっぱり、今年の二月に亡くなっているよ。」
姉さんは、パソコンの写真に向かって手を合わせた。
「南無阿弥陀仏!」
福之助が見に来た。
「この人ですか?」
「この人だよ、名刺の人は。」
「じゃあ、この人が乗ってたんですか、あの乗り物に。」
「そいいうことになるな。」
「そして、今日も同じものを見た。」
「たぶん、あれは同じものだよ。」
「どこに行ったのでしょう?」
「どこに行ったのかなあ〜?次から次に、不思議なことが起きるなあ〜、ここは。」
「そうですね〜〜。」
「やっぱり、あれには、この名刺の人が乗ってたのかな〜〜?」
「幽霊ですか?」
「ロボットは、どう思う?」
「物理的には有り得ないことですけど、消滅した肉体が蘇るとは?」
「肉体じゃないんだよ、魂!」
「何ですか、魂って?プログラムのことですか?」
「プログラムじゃないよ。もっと、根源的なものだよ。」
「根源的なもの?CPUですか?」
「そんなんじゃないよ。」
「アルゴリズムですか?」
「アルゴリズム?何だいそりゃあ?」
「プログラムの根源です。フローチャートです。」
「そういうものじゃないんだよ。目に見えないものなんだよ。」
「そんなのが、世の中にあるんですか?」
「あるんだよ。」
「人間の気は見えないだろう?」
「気ですか?何ですか、それは?」
「気はロボットにはないからな〜。」
「電気はありますよ。」
「なるほど。それに似てるものだよ。」
「え〜〜〜!?そんなものがあるんですか?」
「あるの。」
「だから、気で人を倒したり動かなくできたりできるんだよ。」
「え〜〜〜!?」
「わたしの踊り睡拳は、人をふらふらにして倒せるだろう。」
「そうですねえ!」
「気で、病気を治すこともできるんだよ。」
「そぉおなんですか!」
「病気は、病の気って書くだろう?」
「そうですね〜〜!」
「気を使うって言うだろうが。」
「はい。人間は、人間はみんな気で生きてるんだよ。気がなくなると病気になっちゃうんだよ。」
アニーが上体を起こして「そうです!」と発言した。
「あら、アニーさん、起きたの?」
アニーは「おやすみなさ〜〜い!」と言って、また寝た。
「福之助、もっと静かに話そう。」
「はい。」
アニーが「福ちゃわ〜〜〜ん!」と言った。
福之助は、アニーの近くに行って「わたしは、茶碗ではありませんよ。」と言った。
アニーは、笑った。
「葛城さん!」
「はいはい、何でしょう?」
「今、夢を見てたんですよ。」
「どんな?」
「ユーフォーの夢。大台ケ原に飛んで行っちゃうの。」
「大台ケ原ですか?」
「そう、大台ケ原の鬼のいるところに。」
アニーは目を開けて微笑んだ。姉さんは、気を使った。
「アニーさん、また明日!」
「はい!」
アニーは、微笑みながら、また寝てしまった。



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