「福之助、今何度だい?」 「二十三度です。」 「アニーさんが風邪をぶり返すといけないから、エアコンを点けてくれ。」 「はい!」 高野山の八時の鐘が鳴り響いていた。 「ここにいると、時間の感覚が違って感じるねえ〜、まだ八時かよ。」 「そうですか?日本中、時間は同じですけど。」 「つまんない答えだな〜。」 アニーは、気持ちよさそうに寝ていた。 「福之助、毛布を、もう一枚掛けてやれ。」 「はい。」 姉さんは、パソコンの前に座っていた。 「この人か〜〜〜。」 「何を調べてるんですか?」 「名刺の人だよ。発明学会の豊沢豊雄会長…」 「よく覚えてますね〜〜。」 「かなり強烈な拾い物だったからな〜〜。やっぱり、今年の二月に亡くなっているよ。」 姉さんは、パソコンの写真に向かって手を合わせた。 「南無阿弥陀仏!」 福之助が見に来た。 「この人ですか?」 「この人だよ、名刺の人は。」 「じゃあ、この人が乗ってたんですか、あの乗り物に。」 「そいいうことになるな。」 「そして、今日も同じものを見た。」 「たぶん、あれは同じものだよ。」 「どこに行ったのでしょう?」 「どこに行ったのかなあ〜?次から次に、不思議なことが起きるなあ〜、ここは。」 「そうですね〜〜。」 「やっぱり、あれには、この名刺の人が乗ってたのかな〜〜?」 「幽霊ですか?」 「ロボットは、どう思う?」 「物理的には有り得ないことですけど、消滅した肉体が蘇るとは?」 「肉体じゃないんだよ、魂!」 「何ですか、魂って?プログラムのことですか?」 「プログラムじゃないよ。もっと、根源的なものだよ。」 「根源的なもの?CPUですか?」 「そんなんじゃないよ。」 「アルゴリズムですか?」 「アルゴリズム?何だいそりゃあ?」 「プログラムの根源です。フローチャートです。」 「そういうものじゃないんだよ。目に見えないものなんだよ。」 「そんなのが、世の中にあるんですか?」 「あるんだよ。」 「人間の気は見えないだろう?」 「気ですか?何ですか、それは?」 「気はロボットにはないからな〜。」 「電気はありますよ。」 「なるほど。それに似てるものだよ。」 「え〜〜〜!?そんなものがあるんですか?」 「あるの。」 「だから、気で人を倒したり動かなくできたりできるんだよ。」 「え〜〜〜!?」 「わたしの踊り睡拳は、人をふらふらにして倒せるだろう。」 「そうですねえ!」 「気で、病気を治すこともできるんだよ。」 「そぉおなんですか!」 「病気は、病の気って書くだろう?」 「そうですね〜〜!」 「気を使うって言うだろうが。」 「はい。人間は、人間はみんな気で生きてるんだよ。気がなくなると病気になっちゃうんだよ。」 アニーが上体を起こして「そうです!」と発言した。 「あら、アニーさん、起きたの?」 アニーは「おやすみなさ〜〜い!」と言って、また寝た。 「福之助、もっと静かに話そう。」 「はい。」 アニーが「福ちゃわ〜〜〜ん!」と言った。 福之助は、アニーの近くに行って「わたしは、茶碗ではありませんよ。」と言った。 アニーは、笑った。 「葛城さん!」 「はいはい、何でしょう?」 「今、夢を見てたんですよ。」 「どんな?」 「ユーフォーの夢。大台ケ原に飛んで行っちゃうの。」 「大台ケ原ですか?」 「そう、大台ケ原の鬼のいるところに。」 アニーは目を開けて微笑んだ。姉さんは、気を使った。 「アニーさん、また明日!」 「はい!」 アニーは、微笑みながら、また寝てしまった。
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