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作品名:高野山 人間村 作者:毬藻

第168回   はいはいはい!
庭は芝生で、中央にはテーブルがあり、近くにはバーベキューコンロがあった。その上で大きな鍋が載せられていた。テーブルの上には、缶ビールと缶ジュースが置いてあった。
「さ〜〜あ、出来ました!さあ、こっちに来て好きな分を自分でよそってください。」
みんなはやってきた。鍋の中には色んなものが入っていた。ニンジン、大根、白菜、かぼちゃ、シイタケ、エリンギ、コンニャク。そして主役の里芋。なにやら肉も入ってた。姉さんが質問した。
「これは、何の肉なんですか?」
「肉は猪です。」
「イノシシ?」
「猪は初めてですか?」
「はい。」
「豚と親戚ですが、まったく違った味でおいしいですよ。」
「そうですか。」
「猪の肉は煮込めば煮込むほど軟らかくなり美味しくなります。」
「へ〜〜〜え。」
姉さんは、先ず子供たちによそってあげた。
「お肉と里芋と、どっちが好き?」
真由美が「どっちも好きで〜〜す!」と言うと、沙織は「里芋〜〜!」と言った。
「はい、真由美ちゃん!はい、沙織ちゃん!」
二人は、どうもありがとうと言って受け取った。
姉さんとアニーは、自分でよそった。最後に鎌田がよそった。鎌田はテーブルに戻ると、缶ビールをアニーと姉さんに、缶ジュースを開けて子供たちに配った。自分は缶ビールを手に取った。
「それでは、芋煮パーティに乾杯しましょう!」
姉さんが待ったをした。
「ちょっと待って!わたし、駄目なのアルコールは!」
「あ〜、そうなんですか。じゃあ、ジュースですね?」
「はい、おねがいします。」
鎌田は、ジュースを差す出した。姉さんは受け取った。
「じゃあ、かんぱ〜〜い!」
みんなは、乾杯して一口飲んだ。
「さあ、食べてください!」
みんなは「いただきま〜〜す!と言って食べ始めた。
「わ〜〜、里芋って、こうやって食べると、とっても美味しいわ。」
アニーも同感だった。
「ほんと、おいしいわ。」
二人とも、芋煮というのは初めてだった。
「お二人は、芋煮は初めてですか?」
「はい。」「はい。」
「東北では、秋の年中行事のひとつなんですよ。」
姉さんが「ああ、そうなんですか。」と答えた。アニーが「芋煮というのは、里芋なんですか?」と質問すると、蒲田が「はい、ほとんど里芋です。ジャガイモというのもあるみたいなんですけど、食べたことはありません。」
「鎌田さんも東北なんですか?」
「そうです。山形です。でも、ほんとうは山形では牛肉なんですけどね。猪の肉が美味しかったもので、去年からは、猪の肉にしたんですよ。」
真由美が「ウサギさんは、何にも食べないんですか?」と尋ねると、鎌田は生のニンジンを二本、放り投げた。「ほら、ニンジンでも食ってろ!」
「あんまり食べさせると太るから、やらないんだよ。」
「百キロくらいになったら、大変ね。」
「そんなウサギはいないよ!」
「でも、どこかにいるんじゃないかしら?きのう夢で見たわ。」
「どんなの?」
「大きなウサギが、どんどんって飛び跳ねているの。」
「そんなのがいたら大変だよ。ニュースになるよ。」
「そうですね。そんなのが、どんどんどんって飛び跳ねたら大変ですね。」
「真由美ちゃんは、面白い夢を見るね〜。」
みんなは笑っていた。が、姉さんは美味しそうに食べていた。
「ほんと、猪の肉って柔らかくってジューシーで美味しいわ〜。」
「でしょう。」
アニーが鎌田に質問した。
「鎌田さんは、ここが仕事場で、ここが住いなんですか?」
「そうです。何か?」
「いや、いいですね〜〜。こういうのも。」
「気楽なようで、けっこう大変なんですよ。」
真由美が鎌田に言った。
「鎌田さん、ごはんをくださ〜い。」
「ごはん?あるよ、あるよ。炊いたばっかりのが、後で食べようと思ってたんだよ。今持ってくるね。」
「ありがとうございます。」
「なんだか、去年と同じパターンだ。」
沙織も注文した。
「鎌田さん、わたしもくださ〜い!」
「はい、はいはいはい!今、持ってくるよ。」
鎌田は急いで戻ると、電気釜を待って来た。それをテーブルの上に置くと、再び戻って御飯茶碗を持って来た。御飯茶碗をテーブルの上に置くと、御飯をよそって二人に出した。なぜか、御飯茶碗は五つあった。
「はい。」
二人は「いっただきま〜〜す!」と言って食べ始めた。
「あ〜〜〜あ、夕食になっちゃった。去年と同じパターンだ。」
「わたしもくださ〜い!」と言ったのは、姉さんだった。
「えっ?」
「わたしも、御飯をくださ〜い。」
「はい、はいはい!御飯が人気あるな〜〜。ただの夕食になっちゃったよ。」
アニーは、うまそうにビールを飲んでいた。鎌田が、アニーに「チユーハイもありますけど?」と言った。アニーは「ください。」と答えた。姉さんはびっくりした。
「アニーさん、飲むんですね〜。」
真由美が鎌田に「お茶くださ〜い!」と言った。沙織も同じように「わたしもくださ〜い!」と言った。
「はい、はいはいはい!」
鎌田は、お茶とチューハイを取りに行った。いつの間にか、芋煮パーティは、普通の夕食になっていた。姉さんは、空腹だったのか、無心で食べていた。


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