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作品名:高野山 人間村 作者:毬藻

第167回   陽動作戦
隊長は福隊長に命じた。
「早速、三輪のモーターバイクを五十台注文しといてくれ!」
「はい!」
雑用係の女社員が入って来た。
「社長、メリーゴーランドが来ました。」
「こっちに通せ。」
「はい。」
メリーゴーランドが、深く頭を下げて入って来た。
「失礼します!」
「おっ、来たか。ちょうど良かった。ちょっと話しがあるんだ、そこに座ってくれ。」
「はい。」
「今度、新しいことを始めようと思っているんだよ。君たちにも協力してもらおうと思ってね。」
「はい、どのようなことでも。」
「ただ走り回ってるだけじゃあ、退屈でつまんないだろう。少しは、社会に役立つことがしたいだろう?」
「はい、できれば。」
「今、田舎の老人は買い物で困っていることは知ってるだろう?」
「はい知ってます。買い物難民ですね。」
「そうだ。さすがに君は大卒だけあって、インテリだな。そこでだ、君たちに注文を聞いてきて、買い物をやってもらおうと思ってね。」
「いいですよ。」
「山奥の細い道でも大丈夫かね?モーターバイクで頼みたいんだけど?」
「大丈夫です。」
「それと、宅配の仕事もやろうと思っているので、それも頼みたいんだけど?」
「いいですよ、お安い御用です。」
「そうか、それじゃあ、決まったら電話で連絡するから、ちょっと待っててくれないか。」
「はい、分かりました。」
「話はこれだけ、もういいよ。皆にも言っておいてくれ。」
「はい。」
メリーゴーランドは「失礼します!」と言って、頭を下げて出て行った。
「隊長、明日モーターバイクの若者の連中が来ることになっていますが、三輪のバイクが来るまでどうしましょう?」
「先ず、彼らのモーターバイクで、田舎の調査でもやらせよう。地図を持って来てくれ。」
「はい。」
副隊長は、大きな地図を持って来て、テーブルの上に広げた。
「けっこうあるな〜〜〜。」
「そうですね〜。」
「取り合えず、われわれの近くからやるか、日本全国ってわけにはいかないからな。」
「五十台では、とても無理ですよ。」
「そうだな…、とても無理だな。」
「集めてきた野菜は、どこに集めましょう?」
「そうだな、取り合えず、駐車場にテントを張って、そこに集めよう。」
「それはいい考えですね。」
「ほんとうに、無料でいいんですか?」
「田舎の、やっと暮らしてる老人に、余分な金はないだろう、無料でいいよ。我々の目的は金儲けではない。我々には猿のように、弱いものをいじめる習性はない。」
「はい。」
「金のある老人からは、金を取れば、それでいい。」
「はい。隊長は、地球人の味方か敵か分かりませんな〜。」
「簡単に分かっちゃあ、駄目なんだよ。味方に見せるんだよ。」
「な〜〜〜るほど!」
「陽動作戦ってやつだよ。」
「ようどうさくせん?」
「そんなことも知らんのか、管理職が?」
「はい、すみません。」
「わざと目立つような行動をして敵の注意をそらし、本当の作戦を悟られないようにすることだよ。」
「つまり、カモフラージュ?」
「そういうこと!」
「つまり、買い物も宅配もカモフラージュってことですね?」
「そいうこと!」
「誰に対してのカモフラージュなんですか?」
「おまえアホか、地球人に決まっているだろう。」
「でも、結果的に地球人を救っていますけど?」
「だ〜〜から、カモフラージュなんだよ!」
単純明快思考のな副隊長には、少し理解できなかった。



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