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作品名:高野山 人間村 作者:毬藻

第164回   摩尼山の如意宝珠
きょん姉さんとアニーがテーブルに座り、撮ってきた写真をテレビに映して見ていると、突然、高野山にサイレンが鳴り響いた。

 熊が摩尼山(まにさん)の人家近くに出没しました
 近くの方は至急家の中に非難してください
 絶対に近寄らないでください 現在 忍者隊月光が出動しています

「やっぱり、さっきの忍者隊の出動は、熊だったんだわ!」
「やっぱり、そうだったんですね。」
「摩尼山(まにさん)って、近いんですか?」
「天軸山(てんじくさん)の隣です。すぐそこです。」
「山のどんぐりが少ないんですね。」
「そうに違いありませんね。」
「ナラ枯れですか?」
「そうです。ナラ枯れです。」
「これも、地球温暖化が原因なんですね?」
「そうです。熱中症で沢山の人が亡くなってる今年の異常な猛暑が原因です。」
「可哀想ですね。」
「はい。」
「殺したりはしないんでしょう?」
「殺したりはしません。餌をやって山に追い返すだけです。」
「あ〜〜、良かった!熊には罪はありませんからね。」
「そうです。」
「熊だって、一生懸命に生きているんですから。」
「これから冬眠だから、大変なんですよ。」
「熊も、大変なんでね。摩尼山(まにさん)って、どんな山なんですか?」
「標高は天軸山より少し高いくらいで、如意宝珠(にょいほうしゅ)が埋められているという聖なる山です。」
「にょいほうしゅ?」
「如意宝珠とは、願いをかなえてくれる宝の珠(たま)のことです。」
「そんな玉があるんですか?」
「伝説上です。弘法大師によって山頂に埋められたとされています。」
「へ〜〜〜え。」
「その宝の珠を、龍が護っているとされています。」
「へ〜〜〜え。」
「空海の前には、役行者(えんのぎょうじゃ)が住んでいたとされている山です。」
「えんのぎょうじゃ?」
「空海よりも百年くらい前の人で、修験道の開祖と言われてる人です。」
「っていうと、修験者ですか?」
「はい。呪術者(じゅじゅつしゃ)です。シャーマンとも言いますね。」
「じゅじゅつしゃ?シャーマン?」
「祈祷師(きとうし)ですね。」
「きとうし?」
「神への祈りによって、病気を治したり、いろんなことを占ったりする人のことです。」
「あ〜〜、テレビで観たことあります。キツネが憑いた人を払っていました。」
「非科学的なものもありますが、彼らの知識は今でも役に立っているものもあるです。」
「今でもですか?」
「彼らは、薬草などの専門家でもあったんです。」
「そうなんですか?」
「今でも、薬草を主原料とした飲み薬は、彼らの知識で作られているんです。」
「例えば?」
「葛根湯(かっこんとう)とか。読んで字のごとく、あれは葛(くず)の根から作られています。葛の根は、昔から風邪薬として、また肩こり、頭痛、筋肉痛として使われていたものです。」
「そういうことを知ってたんですね。」
「はい。彼らの知識がなかったら、きっと薬は発展しなかったでしょうね。」
姉さんは、アニーの知識に感心して、顔をじっと見ていた。
「わたし、顔に何かついてます?」
「あっ、いいえ!」
福之助もアニーの話しを聞いていた。
「やっぱりアニーさんは、姉さんとは違うな〜〜!月とスッポンポンだな〜〜!」
「それを言うなら、月とスッポン!アホ!」
「何ですって!」
アニーは笑って二人を見ていた。
「わたしも、その宝の珠が欲しいな〜。」
「如意宝珠(にょいほうしゅ)のことですか?」
「はい。」
「どうするんですか?」
「アニーさんのように、頭がよくなりたいな〜〜。」
「きっと、インターネットで売っていますよ。」
「え〜〜〜〜〜!?」
姉さんは、パソコンの前に座り込んで、検索を始めた。
「あっ、ほんとだ!ありました!」
福之助は、馬鹿にしたような顔で姉さんを横目で見ていた。


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