オロロン星人を乗せたマイクロバスは、清滝街道(きよたきかいどう)を大台ケ原ふもとの村にある大台ケ原レアアースという会社に向かっていた。隊長は、大きく書かれている標語を見ていた。 「無医村、スピード落とせ!か…」 「地球人は、標語が好きですな〜。」 「こういう標語はどうだろう?」 「どういうのですか?」 「真面目に走って、地球を汚そう!」 「それはいいですねえ〜!」 「傑作だろう。」 「傑作です。猿は動き回るのが好きですから。」 「頭がないからなあ〜。」 「なにしろ、先祖が下品な本物の猿ですから。」 「そうだったな。」 「我々、オロロン星人とは根本的に違いますよ。」 「そうだな。」 「我々オロロン星人の祖先は、可愛くって綺麗好きな、上品なアライグマですから。」 「アライグマは綺麗好きで上品だからな。」 彼らが会社に着くと、一人の社員が当惑した顔で出てきた。 「隊長、大変です!」 「なんだ?」 「隊長を慕って、沢山の青少年たちが来ています!」 「青少年?」 「高校生くらいの青少年です。」 「どのくらい来てるんだ?」 「百人ほどです!」 「百人!」 「モーターバイクの暴走族です!」 「暴走族?」 「われわれを雇ってくれと言ってます。」 「そうか、そういうことか…」 「どうしましょう?」 「困ったなあ〜、これ以上余分な金はないしな〜。」 「追い返しましょうか?」 「ちょっと待て、せっかく俺を頼りに来たんだ。可哀想じゃないか。金もなくて困っているんだろう。」 「だと思いますけど。」 「困ったな…」 隊長は考え込んだ。 「今、新しい商売を考えているところなんだよ。それが軌道に乗ったら配達でもやってもらいたいんだけどな〜。走り回るのが好きなんだろう?」 「はい。そういう連中です。」 「…今は駄目だけど、そのうちに雇ってやるから、ガソリン代だけはだしてやるから、おとなしく炭酸ガスをばらまいて走り回ってろ!って言ってやれ。」 「じゃあ、炭酸ガスの分だけガソリン代を払ってやればいいんですね。」 「そういうことだ。」 「分かりました!」 部下の一人は駐車場に向かった。オートバイがエンジンもかけずに大人しく沢山止まっていた。部下の一人が彼らと話していた。若者たちは、「ひゃっほ〜!」と叫びあっていた。そして、爆音を鳴り響かせてマイクロバスの隊長に手を振り、頭を下げながら走り去って行った。隊長は彼らを見ていた。 「若者は純粋でいいな〜。」隊長の目は、涙で潤んでいた。
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